私に恋を教えてくれませんか?
5話

5話

○夜・居酒屋にて新歓コンパ

部長「新入生の諸君! 我が映像研究部にようこそ! かんぱ〜い!」
部長の乾杯の音頭にグラスがぶつかり合い、盛り上がる店内。
モブ女部員「ぜひ今度動画撮らせてください!」
瑞稀「いいよぉ! イケメンに撮って」
蒼「俺は無理っす」

そんなふうにキャーキャー騒がれている蒼と瑞稀を、結菜と華恋は少し離れた席からソフトドリンク片手に眺めていた。
華恋「やっぱり人気者だね〜」
結菜「うん」
そこへ、部長がにこやかに声をかけてくる。
部長「結菜ちゃんは小説家目指してるんだって? 俺が監督を務める映画の脚本書いてみる?」
結菜「ええ!? でも、脚本は小説と全然書き方が違うし、私にできるかどうか――」
断っていると、不意にバックハグされる。
蒼「部長、ダメっす。この子は俺のものなんで」
結菜「なっ」
結菜モノ(言い方!?)
部長「お、おお……そうなの? 悪いね」苦笑しつつも身を引く

その直後、隣の席でジョッキがテーブルにドンと強く置かれた音が響く。
カメラマン志望の藤村 陸があざけるように言う。
陸「恋リアで紫苑ちゃん振った王子が、こんなどこにでもいる女の子を引っ掛けやがって!」
陸「しかも、そのチャラチャラした格好は何なんだよ! そんなんで動画作る気あんのか!?」
瑞稀「おい、陸〜飲み過ぎだぞ。ごめん、陸は紫苑のリアコなんだよ」

宥める瑞稀をよそに、結菜がガタッと立ち上がる。
結菜「っ確かに蒼くんは、ピアスいっぱいだしチャラチャラした格好をしてるけどっ! 動画作りには真剣です!」
蒼「……俺のことそんな風に思ってたのか」
チャラチャラに引っかかってムスっと結菜のほっぺ引っ張る。
蒼「先輩。結菜は誰よりも可愛いっすよ」腹黒笑顔
部員たちから「イチャイチャすな〜!」と笑いながらツッコむ。
陸にだけ聞こえる声で小声で凄む。
蒼「今度そんなこと言ったら埋めます」

びっくりする陸に背を向け、結菜をじっと甘えるように見つめる。
蒼「――明後日、暇?」
結菜「え?」
蒼「その日、午前で講義終わりなんだよね。それまでにデモ仕上げるから、うち来いよ」
結菜「……っ、わ、分かった」
結菜モノ(蒼くんの家――!?)


○2日後・高級タワマン

結菜は深呼吸をして、ピンポンを鳴らす。
すると部屋着の蒼が出てきた。
結菜「お邪魔しますっ!」
結菜「これ、差し入れのケーキ!」
蒼「ん、ありがと」
結菜「あ。そういえば、ご家族は……?」
蒼「……一人暮らしだから、いない」
結菜「こんな広い家に一人で!?」
蒼「うん。今まで稼いだ金を投資してたら増えすぎちゃって……防音室付きのマンション買った。前住んでたとこ、近所迷惑になるから夜ギター禁止だったし」自慢じゃなくサラッと普通のことのように
結菜「えっ!?」
蒼「生みの親はそれぞれ再婚して家庭持ってるし、頼れる大人がいないから必然とな。ソファ座ってて」
ケーキを冷蔵庫に仕舞う蒼。ソファに座りながら蒼の背中を見つめる結菜。
結菜モノ(そんな話、初めて聞いた。私、蒼くんのこと全然知らなかったんだな)
部屋をキョロキョロし出す結菜。
結菜モノ(物が少なすぎる……。こんな広い部屋で一人で暮らしていて寂しい時はないのかな)

お茶を出してくれた蒼が、ソファの隣に座る。
普通にお茶を飲んで「美味しい」っとホッとする危機感のない姿に、蒼はイラっとする。
蒼「……なんか、警戒心なさすぎてムカつく」
結菜「え!?」
蒼「彼氏の家だってちゃんと分かってんの?」
結菜モノ(!?!?!?)
蒼「結菜はさ、俺と、どこまで恋の勉強をしたいの? 高校の時、手は繋いだし」手を繋ぎながら
蒼「キスしたし……」ソファに押し倒す
蒼「その先は、どうすんの――?」色っぽく
結菜「わ、わ、わあああっっ」ぼふっと赤面して半分気絶
蒼「ほらみろ、そんなんじゃ恋できねぇよ。もっと俺に慣れて」
結菜「っ、せっかく教えてくれてるのにごめんなさい」
蒼「いいよ。これで一人暮らしの男の家に上がりこんだらどうなるか分かったろ?」
全力で首を縦に振る結菜。

手を差し伸べられ、二人とも座る体制になる。
蒼「じゃあ、俺に慣れる練習な。十秒間……俺から視線逸らさなかったら、デモ聴かせてあげる」
結菜「へっ!?」
蒼「10……9……」
結菜モノ(蒼くん、やっぱり格好いい……)
蒼「8……7……」熱い眼差し
結菜モノ(なんだか眼差しが熱い。恥ずかしい)
蒼「6……5……4」結菜の肩を掴む
結菜モノ(ま、待って……どんどん距離が縮んで――)
蒼「……3……2……」顔を近づける
蒼「1」キス直前で話す
結菜モノ(キスされるかと思った)
蒼「よくできたな」頭撫で
結菜モノ(あ、甘すぎる……っっ)
蒼「物足りなさそうな顔だ」
蒼「キス、したかった?」
全力で横に首を振る結菜。
結菜モノ(い、色気が半端ない……! やっぱり蒼くんは狼さんです)

○蒼の家・防音室
ギターや、パソコンデスク、音楽用の機材がいっぱいある。
蒼「ほら、ご褒美のデモだぞ〜」
ヘッドホンをつけられ、デモを流す。
曲を聴いて何かに気づく結菜。
結菜「この曲って……もしかして……」
蒼「そ。桜もち先生の小説<恋愛ごっこ>を読んで、作った」
※桜もち=結菜のペンネーム
結菜「え゛っっ!? な、なんで知って……」
結菜モノ(ペンネーム教えてなかったよね!?)
蒼「結菜教えてくれなさそうだし、夏川に聞いた」
結菜モノ(もう、華恋ちゃん――っっ)
蒼「俺たちにしかできない音楽を考えた時、思いついたんだけど」
蒼「結菜の小説を、俺が楽曲化するのはどう?」
蒼「俺たちの夢が一歩近づきそうだし、小説と楽曲を同時公開して、相乗効果を狙うんだ」
蒼「でも、私の小説じゃ……足手纏いになる」
結菜モノ(WEBで公開したら毎回読んでくれる読者さんもいるけど)
結菜モノ(デビュー作の担当さんにいくつかプロット見て貰っても、やっぱり恋愛部分にリアルがないと言われて……)
結菜モノ(没を繰り返しているうちに、いつしか連絡が途絶えた)
結菜「コンテストも、持ち込みも、結果がでないでいる……こんな私じゃ、今後蒼くんの曲を台無しにしてしまうかも」
落ち込む結菜にデコピンする蒼。
蒼「バァーーカ」
結菜「痛っっ」涙
蒼「俺は気に入った話じゃないと曲にしねぇよ」
結菜「蒼くん……」
蒼「何回没にしたって、俺はずっと待ち続ける。だから安心して書け」
結菜「うんっ」

○回想
結菜モノ(こうして私たちは、制作に取り組み)
歌を収録し、曲を完成させ、PVを撮る。
PV撮影手伝っていた華恋が「私SNS運用やりたい!」と立候補。
瑞稀が動画編集。華恋は制作過程をTikTokに流し、ついに一曲目「嘘恋」のフルPVを公開する直前まできた。
結菜モノ(動画を完成させた)


○蒼の家・防音室

蒼のパソコンを囲って、皆んなで見守っている。
華恋「せーの!」
華恋が、投稿ボタンを押す。
※投稿文には小説<恋愛ごっこ>を楽曲化しました(許可済み)と書いてある
華恋「キャー! 投稿されたー!」
蒼「オールしんど……寝る……」
瑞稀「よし、俺のストーリーにも上げたぜ!」
結菜「歌が下手って叩かれたらどうしよう……小説も……」震
蒼「大丈夫。最高の出来だった」
瑞稀「皆疲れただろうから、明日部室で打ち上げな〜!」


○夜・部室で打ち上げ

各々好きなソフドリを飲んでいる。
瑞稀とカメラマンの先輩だけビール。
華恋「想定より再生数伸びなかったけど、最初はこんなもんだよねぇ」
瑞稀「いや、これでも伸びてる方だから! 俺の力!」
華恋「瑞稀くん流石♡」
結菜「コメントも概ね好評でよかっ……」固まる
蒼「どうした?」
結菜「ううん、なんでもない」
結菜が見たコメントには、「曲・歌・映像よくて小説読んだけど、原作はイマイチだった」とあった。
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