「君に花を贈る」番外編……各所の花壇にて
day26.悪夢
「……っ!」
嫌な夢で飛び起きた。
いつもの伯父に怒鳴られたり突き飛ばされたりする夢だ。
時計を見ると、夜中の二時。シャツは汗でベタベタ、エアコンの風音がやけに大きく響いている。あっという間に寒くなってきて、体がブルりと震えた。
ベッドを出てシャツを脱ぎ、別のシャツに着替える。それでも震えは止まらなかった。
机の上に、昼間行った鈴美の個展の目録が置きっぱなしになっていた。
ああ、だから、あんな夢を見たのか。
捨てようと手に取ったとき、本棚のチューリップがふと目に入った。
花音ちゃんが育てて、瑞希がくれたチューリップをプリザーブドフラワーにして、ガラスのケースに入れたものだ。
それを手に取って見つめる。花びらがフリルみたいに広がって、華やかで可愛らしいチューリップ。
大好きなあの子みたいな花だった。
「……会いたいな」
あの子が手を引いてくれたから、俺は悪夢に立ち向かえた。なのに、また負けそうになってた。ここで目録を捨てたらダメだ。向き合うって決めて、あの子にも同じものを渡したのは俺なのに。
椅子に腰を下ろす。
チューリップをお腹の前に抱えたまま、目録を開いた。最初の生け花を見たとき、あの子はなんて言ってたっけ。目を丸くして、ぽかんとした顔で。
パラパラとページをめくる。花そのものより、花を見ていた花音ちゃんの顔を思い出していた。
時計を見ると三時前。さっきまでうるさく感じていたエアコンは、静かに空気を吐き出していた。
気づけば震えも止まり、悪夢のことなんてすっかり忘れていた。
目録を閉じて、本棚にしまう。その手前にチューリップを飾っておく。
目覚まし時計を止めて、部屋を出た。
あの子がいれば、俺は悪夢だって乗り越えられる。
嫌な夢で飛び起きた。
いつもの伯父に怒鳴られたり突き飛ばされたりする夢だ。
時計を見ると、夜中の二時。シャツは汗でベタベタ、エアコンの風音がやけに大きく響いている。あっという間に寒くなってきて、体がブルりと震えた。
ベッドを出てシャツを脱ぎ、別のシャツに着替える。それでも震えは止まらなかった。
机の上に、昼間行った鈴美の個展の目録が置きっぱなしになっていた。
ああ、だから、あんな夢を見たのか。
捨てようと手に取ったとき、本棚のチューリップがふと目に入った。
花音ちゃんが育てて、瑞希がくれたチューリップをプリザーブドフラワーにして、ガラスのケースに入れたものだ。
それを手に取って見つめる。花びらがフリルみたいに広がって、華やかで可愛らしいチューリップ。
大好きなあの子みたいな花だった。
「……会いたいな」
あの子が手を引いてくれたから、俺は悪夢に立ち向かえた。なのに、また負けそうになってた。ここで目録を捨てたらダメだ。向き合うって決めて、あの子にも同じものを渡したのは俺なのに。
椅子に腰を下ろす。
チューリップをお腹の前に抱えたまま、目録を開いた。最初の生け花を見たとき、あの子はなんて言ってたっけ。目を丸くして、ぽかんとした顔で。
パラパラとページをめくる。花そのものより、花を見ていた花音ちゃんの顔を思い出していた。
時計を見ると三時前。さっきまでうるさく感じていたエアコンは、静かに空気を吐き出していた。
気づけば震えも止まり、悪夢のことなんてすっかり忘れていた。
目録を閉じて、本棚にしまう。その手前にチューリップを飾っておく。
目覚まし時計を止めて、部屋を出た。
あの子がいれば、俺は悪夢だって乗り越えられる。