気まぐれヒーロー
ジローさんのセリフに対し、飛野さんの眉間に皺が刻まれる。
こ、この人誰にでも言っちゃうのねそういうこと!!
先輩にも「俺の犬」発言しちゃうのね!すごい度胸ねジローさん!
内心ドギマギしていると、こっちを見た飛野さんと目が合った。
ちょっと身構えてしまう。
想像と、全然違った飛野さん。
どんな奇抜な髪の色なのかと思いきや、なんと一番地味に黒だった。
マントヒヒでもなかった。
ジローさんもけっこう身長高いけど、飛野さんのほうがもう少し高い。185はありそうだ。
それに……飛野さんはヤンキーっていう雰囲気じゃない。
もしもハイジから情報を仕入れてなければ、ジローさん達のお仲間なんて思わなかっただろう。
黒髪短髪で、スラッとしつつも引き締まった感じの体格。スポーツマンのような。
顔立ちもキリッと凛々しい眉が印象的な、爽やかな男前さんだった。
なんでだろう……ジローさんを始め、なんでみんなイケメン揃いなんだろう。
やはりイケメンの周りには、イケメンが集まるんだろうか。
そんな中に放り込まれているギリギリ人間レベルな私は、ますます肩身が狭くなる思いだった。
「もしかしてお前……このコ達のために?」
飛野さんは黒い瞳で私と小春を捉えたまま、ジローさんに問いかけた。
その声色は、意外だと言いたそうに思えた。
「可愛いだろ?」
「!!」
自慢げに飛野さんに答える、ジローさん。
飛野さんは大きく目を見張って、ピシッと石になっていた。
「か、可愛い……!?ジロー、お前女を『可愛い』って言ったのか!?」
「飛野さん、耳遠くなったな。歳なんだなもう」
ジローさんがさらっととても失礼な言葉を吐いたのも、飛野さんには届いてなかったようだ。
飛野さんは驚愕の二文字を最大限に表情に張りつけて、私達とジローさんを懸命に交互に見やっていた。
その狼狽ぶりに、私は何だか彼が不憫に思えてしまった。
ジローさんの「可愛い」の後には、「タマに似て」が続くんですよ、と教えてあげたかった。