気まぐれヒーロー
「や、やめませんよ!でももう少し待ってくださ……」
「ダメだ、待てねえ。そう言ってお前、先延ばしにする気だろ」
どこまでも勘が冴えている王様は、私の考えなんてお見通しのようで。
余裕なんてなくて、きっと顔もリンゴちゃんみたいに赤い私を
泣き出しそうなくらい、追い詰められた私を
彼は知っているくせに、わかっているくせに
いとも容易く……捕えてしまう。
惚れ惚れするほどに美しく艶のある笑みで、私の自由を奪ってしまう。
「俺がどれだけ我慢してると思ってんだよ。待たせんなよ、もう」
そんな俺様でワガママで、自分中心なセリフだって、彼の特権。
王様である彼だけに許される、権限。
抗えない流れに私は、従うだけ。
一つ間を置いて、ジローさんは私の頬を撫でた。
穏やかな瞳が好きだと、思った。
銀髪も、少し長めの前髪から覗く切れ長の目も、高い鼻筋も形の良い唇も……ジローさんを造る全てを
好きだと思った。
そうやって私を虜にしてしまったジローさんは、焦ることもなく、私の様子を窺うようにして顔を寄せてくる。
目を、静かに閉じた。
胸の高鳴りが、私の無音の空間に優しく響く。
そして
唇に触れたのは、しっとりとした柔らかくて温かい感触。
重ねられたのは、大好きな人の唇だった。