気まぐれヒーロー


「や、やめませんよ!でももう少し待ってくださ……」

「ダメだ、待てねえ。そう言ってお前、先延ばしにする気だろ」



どこまでも勘が冴えている王様は、私の考えなんてお見通しのようで。


余裕なんてなくて、きっと顔もリンゴちゃんみたいに赤い私を


泣き出しそうなくらい、追い詰められた私を


彼は知っているくせに、わかっているくせに


いとも容易く……捕えてしまう。


惚れ惚れするほどに美しく艶のある笑みで、私の自由を奪ってしまう。



「俺がどれだけ我慢してると思ってんだよ。待たせんなよ、もう」



そんな俺様でワガママで、自分中心なセリフだって、彼の特権。


王様である彼だけに許される、権限。


抗えない流れに私は、従うだけ。



一つ間を置いて、ジローさんは私の頬を撫でた。



穏やかな瞳が好きだと、思った。


銀髪も、少し長めの前髪から覗く切れ長の目も、高い鼻筋も形の良い唇も……ジローさんを造る全てを


好きだと思った。



そうやって私を虜にしてしまったジローさんは、焦ることもなく、私の様子を窺うようにして顔を寄せてくる。



目を、静かに閉じた。



胸の高鳴りが、私の無音の空間に優しく響く。



そして



唇に触れたのは、しっとりとした柔らかくて温かい感触。




重ねられたのは、大好きな人の唇だった。




< 187 / 368 >

この作品をシェア

pagetop