爛漫ろまんす!

毒の兆候

美豚(びとん)を消滅させ封印する為に、白龍(パイロン)の正妃として迎えられる為にも、ダイエットをせざるを得ない状況となった神美(かみ)は、上流階級の妃達が暮らす、五つの後宮の内の一つ───「麒麟宮」で暮らす事となった。

「先ずは、 度量衡医士(どりょうこういし)達に頼んで健康診断ねっ」

「どりょうこういし?」

「身体に異常がないか…と、長さ・体積・重さを測る専門の医官の事よ。アタシのような上級な妃は、定期的に診てもらうのが決まりなの。生まれも育ちも恵まれた妃候補は心配いらないけど、稀に妓女から妃候補として引き抜かれる娘も居るからねぇ…。」

自分の身体を売っていた女性を「妓女」と言うらしい。何処の馬の骨かも分からない男性と交わる事で、病気を移されて死んでしまった人も居たとか……。

「妓女出身の子は、色んな殿方と性接待を交わしているから、性病を持っている事も少なくはないの…。」

「どんなに美しい容姿をしていても、身体が寄生されてるなら意味がないのよねぇ……。だーかーらー、アンタも万が一って事がないように…診てもらうのよ」

「あ、あ、あたしそんな病気なんて持ってないよ!?。ファ、ファーストキスだって…ま、まだしてないしぃ~……ごにょごにょ…」

「あーそうよねぇ~♪、まだ《《オトコノヒト》》知らないものねぇ~?。ぷぷぷ……お子ちゃまねぇ~」

「な、な、な、なによーーー怒」

「そういえば、 度量衡医士(どりょうこういし)に新しい方が入ったらしいわよ。しかも、動物まで診れるとか……」

「ほら、動物ですって~、豚だから丁度良かったんじゃないの?」

「あら、黄杏(ファンシィ)だって立派な動物じゃないの~笑。最近短気が目立つから、診て戴いたら?」

「怒!!柘榴(シィーリオ)ッ!!あんた喧嘩売ってんのッ!!?」

柘榴(シィーリオ)ちゃん!もっと言ってやって!!」

夜も更けたというのに、麒麟宮は賑わい、今まで静寂に包まれていた後宮に明るい兆しが見えていた。






ガラガラガラガラ─────

白梨国(はくりこく)に馬車が一台、深夜の都を通過する───
馬車の中では年老いた医官三名と、蒼く長い髪の毛を左右に二つ、輪っかに結った、口許を白い布で覆った青年が一人……。落ち着いた様子で瞳を閉じながら、老医達の話に耳を傾けていた。

「いや~、 度量衡医士(どりょうこういし)にこんな優秀な人材が居たとは……」

「それに、動物まで診れるとは……、藍猿(ランホウ)先生は凄いですな……」

「そしてこの中性的な美しさ……、妃達も嘸かし御喜びになるでしょう。」

藍猿(ランホウ)と呼ばれた青年は、老医達の言葉に喜色満面となった。

「いえ…、先生方には敵いませんよ」

「はっはっは…──その上、謙虚と来ましたか……」

度量衡医士(どりょうこういし)としては、まだまだ未熟者なので……、御教授戴けますと幸いです。」

「そう言えば…、白梨国(はくりこく)の麒麟宮に新しい妃が入ったとか……」

「ええ!?、麒麟宮はあの気の強い妃しか居らぬ筈では……」

「それが……何やら訳ありらしく……。」

「噂によれば、陛下の正妃として決まっているとか……いないとか」

「そうだとしたら一大事ですな」

「しかし……、また《《あの様な事件》》が起こらぬと()いのですが……」

「?……《《あの様な事件》》とは?」

「嗚呼…、藍猿(ランホウ)先生は初めてでしたな。」

白龍帝(はくりゅうてい)の正妃候補として選ばれた者が、毒殺されるという……悲惨な事件が勃発した時期がございましてな……」

「毒殺……?」

「正妃として選ばれる前夜に、何者かが妃に毒を盛ると言う……」

「毒味役もお手上げな難関事件……と言うより、呪いですな。」

「だとしたら……、その麒麟宮の…正妃として決まっているかもしれない妃は……」

「……殺されるかもしれませぬ」


藍猿(ランホウ)の閉じていた瞳が、ゆっくりと開眼する。
その瞳は、深みがかかった真紅色だった。
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