ガーネット

ガラッ
教室の戸が開く。

「先生〜!おっは〜!」「おはよ!!」

「おはよう。」

「早く彼女作れよ〜。もうすぐ先生、三十路だろ笑」

「高校生に言われる筋合いないから笑お前らはまず勉強しろ。」

「へーい」
「お前言われてやんの〜笑笑」「早く赤点回避しなよー?」

どっと教室に笑いが起こる。お調子ものだろうなあの子。先生になんて言ったんだろう。そして先生はなんて返したんだろう。

あの教室に私は居ない。

ただ窓越しにそれを見つめるだけ。


「‥はよ‥はよう‥っおはよう!!!」

「うわっびっくりした!アカリかぁ、おはよう。」

「いやいや、こっちこそびっくりだからね?なんで朝からぼーっとしてんの!!」

元気がいいのが取り柄のアカリは私の友達。俗にいう陽キャだから私とは全然違う。

「カエデさーずっと気になってるんだけどそのノートなに?まさか‥朝、早く学校に来て勉強!?アカリ尊敬!!」

ノート?ハッとする。
焦ってノートをカバンに押し込んだ。
見られたらマズイのだ。
アカリに見られたらどうせキモがられるに違いない。

「あぁノート?うーんとね数学やってた〜。バツばっかりだから恥ずいんだよね笑笑
朝早く学校来ると得した感あっていいよー?」

アカリは、えー私は学校嫌いだから絶対早く来て勉強なんて無理だわ笑笑、と言ってたけど‥
私が学校に早く来る理由は、アカリが思ってるような「朝学習」じゃない。

7時43分。
先生が裏門から入ってくる時間。

右手でスマホを持ってて、コーヒー缶を小指と薬指で挟むみたいにして、鞄は肩に無造作にかけてる。
ワイシャツの袖、今日はまくってなかった。寝坊したのかな?

あんなに無防備な姿を見られるの、きっと私だけだ。

…なんてね。

こんなこと、アカリには絶対言えない。
いや、誰にも。
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