指輪を見つけた王子様
森の奥にあるお城に、王子様が住んでいました。王子様は少しだけ臆病でした。
朝、使用人が朝食をテーブルに並べている様子を、王子様はそわそわしながら見ていました。
「あの……」
王子様の声はあまりに小さくて、使用人には届きません。朝食の準備を終えて使用人が部屋を出て行くと、王子様はため息をつきました。
少し前の誕生日に大勢で食事をした王子様は、またみんなで食事をしたいと思っていました。でも、それを伝える勇気がありません。
「今日も言えなかったな……」
王子様はぽつりと呟いて、テーブルに並んでいる食事を見つめました。
そんなことが続いたある日、王妃様から贈り物が届きました。それは、『勇気の指輪』という絵本でした。
表紙には、王子様と同じくらいの男の子が描かれています。王子様は、窓辺の椅子に腰掛けて読み始めました。
『勇気の指輪』は、臆病な王子様が森で見つけた金色の指輪によって、勇気を持てるようになるお話です。
絵本の中の王子様は、背の高い大人が怖くて挨拶ができません。その様子は今の自分とそっくりです。
「僕にも指輪があったらいいのに。」
王子様はふと窓の外に目を向けました。すると森の中で何かが光った気がしました。
王子様は思わず部屋を飛び出しました。あの光は、『勇気の指輪』かもしれないと思ったのです。
城の門をくぐり抜けると、見張りの兵士に声をかけられました。
「どこへ行かれるのですか?」
「も……森へ行ってくる……」
「お1人では危険です。」
「すぐ戻るから!」
王子様は森へ向かって走り出しました。大人と一緒にいては、指輪を見つけることができないと思ったからです。
森に着いた王子様は足を止めました。森の中は薄暗く、木々のざわめきが不気味に響いています。
「僕は、指輪を見つけるんだ!」
王子様は呼吸を整えて森の奥へ足を踏み入れました。奥へ進むにつれて、どんどん暗くなっていきます。
王子様は思わず後ろを振り返りました。心配した兵士が、こちらへ向かって来ています。
「早く見つけないと。」
王子様は前を向きました。すると、道の真ん中にキラリと光るものが落ちています。駆け寄ると、それは金色の指輪でした。
「あった!」
王子様は右手の人差し指にはめてみました。すると、木々の合間から陽が差し込み、王子様を照らしました。
「もう大丈夫……僕にもできる。」
木々のざわめきも、もう怖くありません。王子様は胸を張って来た道を戻っていきました。
「ただいま!」
王子様が大きな声で言うと、迎えに来た兵士は安心した表情でおかえりなさいと返してくれました。
夕食の時間になると、使用人たちが食事を運んできました。王子様は指輪をしている右手を握りしめました。今なら自分の気持ちを伝えることができます。
「またみんなで食事をしたいんだ。その方が楽しいと思うから……どうかな?」
王子様が声をかけると、使用人たちはにっこりと微笑みました。
「ありがとう、勇気の指輪。」
大勢で食事をした日の夜、王子様は指輪をはずして大切に宝箱にしまいました。これからは指輪に頼らずに自分の気持ちを伝えたい──そう思ったのです。
そして、『勇気の指輪』を開きました。絵本の最後のページには、大勢で楽しそうに食事をする王子様の姿が描かれています。
「あれ?」
王子様は自分の服を見下ろしました。絵本の中にいる王子様は、自分が着ている服と同じ服を着ています。
「これは僕だったんだ!」
王子様は、『勇気の指輪』に出てくる王子様が自分だったことに気づいたのでした。
朝、使用人が朝食をテーブルに並べている様子を、王子様はそわそわしながら見ていました。
「あの……」
王子様の声はあまりに小さくて、使用人には届きません。朝食の準備を終えて使用人が部屋を出て行くと、王子様はため息をつきました。
少し前の誕生日に大勢で食事をした王子様は、またみんなで食事をしたいと思っていました。でも、それを伝える勇気がありません。
「今日も言えなかったな……」
王子様はぽつりと呟いて、テーブルに並んでいる食事を見つめました。
そんなことが続いたある日、王妃様から贈り物が届きました。それは、『勇気の指輪』という絵本でした。
表紙には、王子様と同じくらいの男の子が描かれています。王子様は、窓辺の椅子に腰掛けて読み始めました。
『勇気の指輪』は、臆病な王子様が森で見つけた金色の指輪によって、勇気を持てるようになるお話です。
絵本の中の王子様は、背の高い大人が怖くて挨拶ができません。その様子は今の自分とそっくりです。
「僕にも指輪があったらいいのに。」
王子様はふと窓の外に目を向けました。すると森の中で何かが光った気がしました。
王子様は思わず部屋を飛び出しました。あの光は、『勇気の指輪』かもしれないと思ったのです。
城の門をくぐり抜けると、見張りの兵士に声をかけられました。
「どこへ行かれるのですか?」
「も……森へ行ってくる……」
「お1人では危険です。」
「すぐ戻るから!」
王子様は森へ向かって走り出しました。大人と一緒にいては、指輪を見つけることができないと思ったからです。
森に着いた王子様は足を止めました。森の中は薄暗く、木々のざわめきが不気味に響いています。
「僕は、指輪を見つけるんだ!」
王子様は呼吸を整えて森の奥へ足を踏み入れました。奥へ進むにつれて、どんどん暗くなっていきます。
王子様は思わず後ろを振り返りました。心配した兵士が、こちらへ向かって来ています。
「早く見つけないと。」
王子様は前を向きました。すると、道の真ん中にキラリと光るものが落ちています。駆け寄ると、それは金色の指輪でした。
「あった!」
王子様は右手の人差し指にはめてみました。すると、木々の合間から陽が差し込み、王子様を照らしました。
「もう大丈夫……僕にもできる。」
木々のざわめきも、もう怖くありません。王子様は胸を張って来た道を戻っていきました。
「ただいま!」
王子様が大きな声で言うと、迎えに来た兵士は安心した表情でおかえりなさいと返してくれました。
夕食の時間になると、使用人たちが食事を運んできました。王子様は指輪をしている右手を握りしめました。今なら自分の気持ちを伝えることができます。
「またみんなで食事をしたいんだ。その方が楽しいと思うから……どうかな?」
王子様が声をかけると、使用人たちはにっこりと微笑みました。
「ありがとう、勇気の指輪。」
大勢で食事をした日の夜、王子様は指輪をはずして大切に宝箱にしまいました。これからは指輪に頼らずに自分の気持ちを伝えたい──そう思ったのです。
そして、『勇気の指輪』を開きました。絵本の最後のページには、大勢で楽しそうに食事をする王子様の姿が描かれています。
「あれ?」
王子様は自分の服を見下ろしました。絵本の中にいる王子様は、自分が着ている服と同じ服を着ています。
「これは僕だったんだ!」
王子様は、『勇気の指輪』に出てくる王子様が自分だったことに気づいたのでした。


