この夏をまってた。
どっちもだよ。
三人で教室に入ると、まだ誰もいなかった。
私は一番奥、窓側の自席にカバンを置き、数学の教科書とノートを開く。
ゆーひが毎朝予習する習慣が、私も染み付いていたのだ。
すると、私の右隣の席に座っていたゆーひが、私の前の席に座るシオンを、チラチラと見ながら言う。
「あ、まいも予習?教科書まだ届いてないから教科書見せて」
「? うん、いいよ。何の教科?」
他の教科書をカバンからガサゴソと取り出す。
その手を、上から大きな手が止めた。
「数学がいい」
「え? いいけど……」
なぜ、私と同じ教科をチョイスするのだろう?
ゆーひは内容を理解するのが速い。
そうなると、当然、開くページが違ってくる。
同じ教科書を使うと、ゆーひが面倒な気がするけど……。
相当シオンが気に食わないらしい。
机をくっつけて、その間に教科書を置く。
やはり、ゆーひが隣の席に座っているの、新鮮だな。
ゆーひは、ニーッとシオンに向かって悪い顔で笑っていた。
怒ったシオンは、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来る。
怒りに震えるシオンは、顔をしかめっ面から人が変わったようににっこりと笑った。
「まい、俺、教えるよ」
そう言うと、ゆーひの隣を通りすぎて、私の背後で立ち止まる。
何が始まるのだろうと思って振り向く。
ふわりとシオン匂いがした。
電車の中と同じように抱き着かれる。
私は、シオンの体温に安心した。
「ありがと、シオン」
シオンは優しい笑顔で、笑い返してくれた。
「まい、そこはこの公式を使うから……」
「あ、そっか! それだと十二の二乗になるんだ!」
やり方が謎すぎるけれど、さすが毎回テストで学年一位の実力。
とても説明が分かりやすい。
そんな私達を、恨めしそうに見ているゆーひの事は、見えないふりをした。
教科書の進度が速いゆーひと同じくらいで進めることができた。
数学の予習が終わると、私はシオンの腕の中で、うたた寝をしてしまった。
***
私は、雲のようにふわふわで、大きなテディベアにもたれかかって眠る。
テディベアを抱きしめると、シオンと同じ匂いがした。
その首元に、私の頬をすり寄せる。
「シオン大好き……」
まるで、猫のような私に、テディベアはどんどん体温を上げていた。
***
その時シオンは、逆にまいの方から抱きしめられ、顔を耳まで真っ赤にしてオドオドした動揺の隠せない顔をしていた。
それでも、なんとか平然を保とうとしていた。
「シオン大好き……」
その一言で、シオンの魂は天にまで昇った。
まだ恨めしそうに見ていた夕陽は、まいの手を取って、自分の指を絡めた。
まいが不満げな顔をしてむくっと起きる。
「ゆーひ」
「何?」
「……暑い」
そう言うと、まいはその手を振り払い、また浅い眠りについた。
夕陽は、わなわな震えながらボソッと言い放った。
「な……なんでシオンはよくてオレはダメなんだ…………」
それを嘲笑うかのようにシオンはニヤニヤと、とどめを刺した。
「Don’t mind☆」
私は、夢の中でテディベアに小馬鹿にされるゆーひを、仲良しな二人を見る目で眺めていた。
私は一番奥、窓側の自席にカバンを置き、数学の教科書とノートを開く。
ゆーひが毎朝予習する習慣が、私も染み付いていたのだ。
すると、私の右隣の席に座っていたゆーひが、私の前の席に座るシオンを、チラチラと見ながら言う。
「あ、まいも予習?教科書まだ届いてないから教科書見せて」
「? うん、いいよ。何の教科?」
他の教科書をカバンからガサゴソと取り出す。
その手を、上から大きな手が止めた。
「数学がいい」
「え? いいけど……」
なぜ、私と同じ教科をチョイスするのだろう?
ゆーひは内容を理解するのが速い。
そうなると、当然、開くページが違ってくる。
同じ教科書を使うと、ゆーひが面倒な気がするけど……。
相当シオンが気に食わないらしい。
机をくっつけて、その間に教科書を置く。
やはり、ゆーひが隣の席に座っているの、新鮮だな。
ゆーひは、ニーッとシオンに向かって悪い顔で笑っていた。
怒ったシオンは、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来る。
怒りに震えるシオンは、顔をしかめっ面から人が変わったようににっこりと笑った。
「まい、俺、教えるよ」
そう言うと、ゆーひの隣を通りすぎて、私の背後で立ち止まる。
何が始まるのだろうと思って振り向く。
ふわりとシオン匂いがした。
電車の中と同じように抱き着かれる。
私は、シオンの体温に安心した。
「ありがと、シオン」
シオンは優しい笑顔で、笑い返してくれた。
「まい、そこはこの公式を使うから……」
「あ、そっか! それだと十二の二乗になるんだ!」
やり方が謎すぎるけれど、さすが毎回テストで学年一位の実力。
とても説明が分かりやすい。
そんな私達を、恨めしそうに見ているゆーひの事は、見えないふりをした。
教科書の進度が速いゆーひと同じくらいで進めることができた。
数学の予習が終わると、私はシオンの腕の中で、うたた寝をしてしまった。
***
私は、雲のようにふわふわで、大きなテディベアにもたれかかって眠る。
テディベアを抱きしめると、シオンと同じ匂いがした。
その首元に、私の頬をすり寄せる。
「シオン大好き……」
まるで、猫のような私に、テディベアはどんどん体温を上げていた。
***
その時シオンは、逆にまいの方から抱きしめられ、顔を耳まで真っ赤にしてオドオドした動揺の隠せない顔をしていた。
それでも、なんとか平然を保とうとしていた。
「シオン大好き……」
その一言で、シオンの魂は天にまで昇った。
まだ恨めしそうに見ていた夕陽は、まいの手を取って、自分の指を絡めた。
まいが不満げな顔をしてむくっと起きる。
「ゆーひ」
「何?」
「……暑い」
そう言うと、まいはその手を振り払い、また浅い眠りについた。
夕陽は、わなわな震えながらボソッと言い放った。
「な……なんでシオンはよくてオレはダメなんだ…………」
それを嘲笑うかのようにシオンはニヤニヤと、とどめを刺した。
「Don’t mind☆」
私は、夢の中でテディベアに小馬鹿にされるゆーひを、仲良しな二人を見る目で眺めていた。