紺碧のアステリズム



「矢嶋さんもなかなかしつこいわね。」

「おい、聞こえてるぞ珠子。」



珠子はぷいっとそっぽを向く。親が同業者である二人は、仲は良くないが面識があるそう。逃げ場をなくして会話を余儀なくされた私達の間に、珠子が立ってくれた。



「どうして桜にこだわるの? 嫁の候補なんて、いくらでもいるじゃない?」

「だろうな。 でも、俺の家は所詮ぽっと出の新参者。 俺には名前がいるんだ。 わかるだろう?」

「だとしても、どうして桜なのよ。」

「そりゃあ、顔がいいからに決まってる。 身体つきはもう少し太い方が理想だが。」



悪びれもなく、なんて失礼なことを言うのだろう。
これにはさすがの珠子も怒ったようだった。



「あのねぇ! 私達にも選ぶ権利というものがあるわ。 桜に求婚しているのはあなただけじゃないんだから。 それに……」

「私は愛のない結婚はしないわ。」



キッと睨みつける私のことなどちっとも怖くなさそうに…むしろ滑稽な奴らだと矢嶋さんは笑った。



「現実は小説とは違うんだぞ? まあ、愛が欲しいならその辺は心配するな。 愛してやれるから。」



人の身体を舐め回すかのような、じっとりとした視線に身震いがした。



< 38 / 38 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

恋は揺らめぎの間に

総文字数/117,142

恋愛(純愛)162ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
勝手に初恋を拗らせて 「俺を使って」 その言葉に ずっと甘えたままで 「僕と付き合ってくれませんか?」 これで良かったのか 今更どうするのか 何もわからないまま 今日もアナタに乱される

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop