【書籍化】聖騎士様と始める異世界旅行事業 ~旅行会社の会社員でしたが異世界に転生したので起業します~
山道を登っていくと、頂上付近に差し掛かったところで溶岩洞窟に辿り着いた。洞窟の入り口がぽっかりと口を開けている。深部にマグマが滾っているのか、中から熱気が溢れ出ていた。これは想像以上に暑そうだ。過酷なダンジョン攻略になりそうだった。
セシリーナは、すでに滲み始めた額の汗を指先で拭う。
「だいぶ熱そうですね……」
「ヒース様の防護魔法がなかったら足を踏み入れることすら難しかったかもしれませんね」
「たしかに」
隣に並んだケルヴィンが言って、セシリーナは深々と頷く。ヒースのおかげで体感する熱気を大幅に抑えられているのだろう。効果は抜群だ。
溶岩洞窟を覗き込んでいたアベルが振り返る。
「とりあえず異常はなさそうだな。出入口に狂暴な魔獣もいなそうだ」
「アベル、ありがとうございます。――お嬢様、時間も限られていることですしさっそく攻略を始めましょうか」
「はい、頑張ります! 皆さん、行きましょう」
先頭をアベル、しんがりをケルヴィンに担ってもらい、一行は洞窟に入っていく。一行が手に持つ松明の火が、暗い洞窟内にゆらゆらと人魂のように揺れていた。
所変わって。ヒースはさっそく村長の家を訪れていた。村特有の刺繍の入った毛織物の上に、村長と向き合って座っている。ヒースは密かに敷物の模様に目をやった。
(これもセシリーナの言っていた英語なのか?)
転生者である彼女のみが知っている文字。それにどういった意味があるのだろう。女神は何かを仕組んでいるのだろうか。
思案に耽っていたらしい。村長が気遣うように言う。
「ヒース様? もしやお具合でも悪いのですかな?」
「あ、ああ、すみません。少し考え事をしていて……」
「無理もございません。この村には、貴方様の知りたい答えがあるでしょうからな」
「…………」
村長の思わせぶりな言い方に、ヒースが鋭く目を細める。やはり彼は、自分が何を知りたくてこの村に足を運んだのか察しているのだろう。
それならば回りくどい言い方は必要ない。単刀直入に聞こう。
ヒースは顔を上げる。
「村長、教えてください。私の出身であるクラーク一族は、長年、この世界を存続させるために聖騎士と竜王を利用してきたようなのです」
「ええ」
「僕はそれが何故なのか知りたい。聖騎士と竜王が領土争いを繰り返すことに何の意味があるのか」
「なるほど。ヒース様はクラーク一族の中でもお若い。まだ詳細を知らされていないのですな」
ヒースは頷く。おそらく父親の教皇ならば繰り返す領土争いの理由を知っているのかもしれない。それでも自分は、その理由も知らずに流されるままに教皇の座に就きたくはないのだ。父の後を継げば、その後に何を知っても後戻りはできない。自分が納得できないことをやり続けたり、隠したり守ったりすることは御免だった。
ヒースはさらに続ける。
「それから、この村の至るところにある古代文字についてもお聞きしたい」
「お気づきでしたか。今では誰も読める者は残っておらぬものですが」
「そのようですね。けれどもひとりだけ読める者がおりました。弊社社長のセシリーナです」
「なんですと?」
村長が驚愕に目を見開く。まさか、と言った様子だった。やはり村長はこの古代文字についても何か知っているようだ。
ヒースはここぞとばかりに叩き込む。
「彼女は転生者なのです。そしてこの古代文字は、彼女が前世の世界で扱っていたもののようです」
セシリーナは、すでに滲み始めた額の汗を指先で拭う。
「だいぶ熱そうですね……」
「ヒース様の防護魔法がなかったら足を踏み入れることすら難しかったかもしれませんね」
「たしかに」
隣に並んだケルヴィンが言って、セシリーナは深々と頷く。ヒースのおかげで体感する熱気を大幅に抑えられているのだろう。効果は抜群だ。
溶岩洞窟を覗き込んでいたアベルが振り返る。
「とりあえず異常はなさそうだな。出入口に狂暴な魔獣もいなそうだ」
「アベル、ありがとうございます。――お嬢様、時間も限られていることですしさっそく攻略を始めましょうか」
「はい、頑張ります! 皆さん、行きましょう」
先頭をアベル、しんがりをケルヴィンに担ってもらい、一行は洞窟に入っていく。一行が手に持つ松明の火が、暗い洞窟内にゆらゆらと人魂のように揺れていた。
所変わって。ヒースはさっそく村長の家を訪れていた。村特有の刺繍の入った毛織物の上に、村長と向き合って座っている。ヒースは密かに敷物の模様に目をやった。
(これもセシリーナの言っていた英語なのか?)
転生者である彼女のみが知っている文字。それにどういった意味があるのだろう。女神は何かを仕組んでいるのだろうか。
思案に耽っていたらしい。村長が気遣うように言う。
「ヒース様? もしやお具合でも悪いのですかな?」
「あ、ああ、すみません。少し考え事をしていて……」
「無理もございません。この村には、貴方様の知りたい答えがあるでしょうからな」
「…………」
村長の思わせぶりな言い方に、ヒースが鋭く目を細める。やはり彼は、自分が何を知りたくてこの村に足を運んだのか察しているのだろう。
それならば回りくどい言い方は必要ない。単刀直入に聞こう。
ヒースは顔を上げる。
「村長、教えてください。私の出身であるクラーク一族は、長年、この世界を存続させるために聖騎士と竜王を利用してきたようなのです」
「ええ」
「僕はそれが何故なのか知りたい。聖騎士と竜王が領土争いを繰り返すことに何の意味があるのか」
「なるほど。ヒース様はクラーク一族の中でもお若い。まだ詳細を知らされていないのですな」
ヒースは頷く。おそらく父親の教皇ならば繰り返す領土争いの理由を知っているのかもしれない。それでも自分は、その理由も知らずに流されるままに教皇の座に就きたくはないのだ。父の後を継げば、その後に何を知っても後戻りはできない。自分が納得できないことをやり続けたり、隠したり守ったりすることは御免だった。
ヒースはさらに続ける。
「それから、この村の至るところにある古代文字についてもお聞きしたい」
「お気づきでしたか。今では誰も読める者は残っておらぬものですが」
「そのようですね。けれどもひとりだけ読める者がおりました。弊社社長のセシリーナです」
「なんですと?」
村長が驚愕に目を見開く。まさか、と言った様子だった。やはり村長はこの古代文字についても何か知っているようだ。
ヒースはここぞとばかりに叩き込む。
「彼女は転生者なのです。そしてこの古代文字は、彼女が前世の世界で扱っていたもののようです」