聖騎士様と始める異世界旅行事業 ~旅行会社の会社員でしたが異世界に転生したので起業します~
翌日。ラストダンジョン攻略ツアーに挑む参加者たちを乗せた幌馬車は、王都を出発して火の村アグニスへ向かっていた。最終決戦地へと向かうからか、皆言葉少なだった。心地の良い緊張感の中、一行はオアシスを越え、数日間を要してアグニスの村へ到着した。
一行を出迎えた村長が目尻に皺を刻む。
「おお、おお、よくぞ戻っていらっしゃった」
「お久しぶりです、村長様」
幌馬車から降りたセシリーナは、村長に頭を下げる。
『星を喰らう魔獣』に挑む間、村を拠点にさせてもらうことになっている。これからしばらくお世話になるだろう。
村長が後から降りてきたヒースに目をやった。
「お父上と腹を割ってお話しできたようですな。晴れやかな顔をしていらっしゃる」
「おかげさまで」
「そうはようございました。これで心行くまで力を振るっていただけそうですな」
ヒースと村長はお互いだけがわかる笑顔を向け合っている。
自分たちが知らぬ間に、二人で何か相談していたのだろうか。ヒースの心からの笑みを見るに、きっと良い方向に向かったのだろうと思えた。こちらもつられて笑顔になる。
村長が手招きする。
「お疲れでございましょう。とりあえず宿に荷物を置いてくだされ」
「私もお手伝いいたします、村長」
「おお、カルメン。おまえも無事に皆様に合流できたようだな。皆様のお力になれるよう尽くしなさい」
「御意」
(ああそうか。カルメンはアグニスの出身だったっけ)
カルメンと村長の後ろ姿を見つめてセシリーナは思う。
彼は村の男たちの中でも背が高くしなやかな筋肉がついている。もしかしたら村長は村一番の戦士を自分たちのところに遣わせてくれたのかもしれない。
村長の案内で、セシリーナたちは宿の二階の客室に宛がわれた部屋に荷物を置く。
(仕込み杖と、それから聖水と各種薬品と……)
地下都市に向かうにあたり、最低限必要な物のみを革の袋に詰めていく。衣類やすぐには不要な消耗品は革鞄に入れたまま宿に置いていく。なるべく軽装で動きやすい服装を心掛ける。これから先は一瞬の身動きの遅さが命取りになるかもしれないから。
ひと通りの荷解きを終えたら、すぐにでも火山に向かう予定になっている。魔物の孵化まで残された時間は少ない。一分一秒でも早く行動するためだった。
セシリーナは革袋を背負うと宿の階下へと降りる。そこにはすでに仲間たちの姿が揃っていた。
「ああ、先輩! こっち、こっちです!」
「フィオナ、みんな、お待たせしました!」
「セシィ、忘れ物はねぇか? 出発したらもう戻れねぇからな」
「そんな子どもの遠足みたいな……」
フィオナが手招きをしてくれてテンションが上がったのも束の間に、その隣にいたアベルの台詞にげんなりしてしまう。
なんという緊張感のない……。皆さすがというか、いつもと何ら変わらない落ち着きぶりだった。
そこへ宿の女将がやって来る。
「あらあら、皆さんお揃いだねぇ」
「女将さん、おはようございます。これからしばらくお世話になります」
「何のお構いもできやしないけど、気をつけて行っておいでね。はい、お弁当」
「わあ、ありがとうございます!」
女将はセシリーナは幾つかの小包を手渡した。できたてほやほやの良い匂いがする。小麦のパンにチーズにドライフルーツに――と日持ちのする携帯食を揃えてくれていた。これで当面の食料は持つだろう。
村長がやって来る。
「まずは村の裏手の火山に向かわれるのでしたな」
「はい。一度足を踏み入れているので問題ないかと」
アベルが答える。
こちらには今度は火の精霊イフリートもいる。火山で苦戦することはないだろう。
村長が頷いた。
「そうか。火の精霊の加護を得たのじゃったな。立派な精霊使いになられましたな」
「ありがとうございます。聖騎士アベルの力になれるように頑張ります」
「頼もしい限りですな。朗報をお待ちしております。何かあればすぐにお戻りください」
セシリーナは村長の言葉に力強く首を縦に振った。
それぞれに武装をした仲間たちは、村びとに見送られて颯爽と村を後にする。
目指すは火山――着実に『星を喰らう魔獣』の本拠地に近づいていくのだった。
一行を出迎えた村長が目尻に皺を刻む。
「おお、おお、よくぞ戻っていらっしゃった」
「お久しぶりです、村長様」
幌馬車から降りたセシリーナは、村長に頭を下げる。
『星を喰らう魔獣』に挑む間、村を拠点にさせてもらうことになっている。これからしばらくお世話になるだろう。
村長が後から降りてきたヒースに目をやった。
「お父上と腹を割ってお話しできたようですな。晴れやかな顔をしていらっしゃる」
「おかげさまで」
「そうはようございました。これで心行くまで力を振るっていただけそうですな」
ヒースと村長はお互いだけがわかる笑顔を向け合っている。
自分たちが知らぬ間に、二人で何か相談していたのだろうか。ヒースの心からの笑みを見るに、きっと良い方向に向かったのだろうと思えた。こちらもつられて笑顔になる。
村長が手招きする。
「お疲れでございましょう。とりあえず宿に荷物を置いてくだされ」
「私もお手伝いいたします、村長」
「おお、カルメン。おまえも無事に皆様に合流できたようだな。皆様のお力になれるよう尽くしなさい」
「御意」
(ああそうか。カルメンはアグニスの出身だったっけ)
カルメンと村長の後ろ姿を見つめてセシリーナは思う。
彼は村の男たちの中でも背が高くしなやかな筋肉がついている。もしかしたら村長は村一番の戦士を自分たちのところに遣わせてくれたのかもしれない。
村長の案内で、セシリーナたちは宿の二階の客室に宛がわれた部屋に荷物を置く。
(仕込み杖と、それから聖水と各種薬品と……)
地下都市に向かうにあたり、最低限必要な物のみを革の袋に詰めていく。衣類やすぐには不要な消耗品は革鞄に入れたまま宿に置いていく。なるべく軽装で動きやすい服装を心掛ける。これから先は一瞬の身動きの遅さが命取りになるかもしれないから。
ひと通りの荷解きを終えたら、すぐにでも火山に向かう予定になっている。魔物の孵化まで残された時間は少ない。一分一秒でも早く行動するためだった。
セシリーナは革袋を背負うと宿の階下へと降りる。そこにはすでに仲間たちの姿が揃っていた。
「ああ、先輩! こっち、こっちです!」
「フィオナ、みんな、お待たせしました!」
「セシィ、忘れ物はねぇか? 出発したらもう戻れねぇからな」
「そんな子どもの遠足みたいな……」
フィオナが手招きをしてくれてテンションが上がったのも束の間に、その隣にいたアベルの台詞にげんなりしてしまう。
なんという緊張感のない……。皆さすがというか、いつもと何ら変わらない落ち着きぶりだった。
そこへ宿の女将がやって来る。
「あらあら、皆さんお揃いだねぇ」
「女将さん、おはようございます。これからしばらくお世話になります」
「何のお構いもできやしないけど、気をつけて行っておいでね。はい、お弁当」
「わあ、ありがとうございます!」
女将はセシリーナは幾つかの小包を手渡した。できたてほやほやの良い匂いがする。小麦のパンにチーズにドライフルーツに――と日持ちのする携帯食を揃えてくれていた。これで当面の食料は持つだろう。
村長がやって来る。
「まずは村の裏手の火山に向かわれるのでしたな」
「はい。一度足を踏み入れているので問題ないかと」
アベルが答える。
こちらには今度は火の精霊イフリートもいる。火山で苦戦することはないだろう。
村長が頷いた。
「そうか。火の精霊の加護を得たのじゃったな。立派な精霊使いになられましたな」
「ありがとうございます。聖騎士アベルの力になれるように頑張ります」
「頼もしい限りですな。朗報をお待ちしております。何かあればすぐにお戻りください」
セシリーナは村長の言葉に力強く首を縦に振った。
それぞれに武装をした仲間たちは、村びとに見送られて颯爽と村を後にする。
目指すは火山――着実に『星を喰らう魔獣』の本拠地に近づいていくのだった。