メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
「だったらぜひお呼びください。公平を期するために女性もお呼びください。どういう結果であれ、あなたにとってはまずいというのなら、今後うちでの飲食はすべて、あなたもあなたの友達も無料とさせていただきます」
「乃蒼、そんなの……」
 止めようとした陽音の口に人差し指を立て、乃蒼は沈黙を要求する。

『わかった、そこまで言うならやってやろう』
 答える声にはまた意地悪がにじんでいる。
 日時を決めて電話を切ったあと、陽音はすぐ乃蒼に言った。

「あんな約束したらお店がつぶれるまで食べ尽くされるよ。正直においしいなんて言うわけない」
「それでもまずは勝負にのらせる必要があった」

「だけど……」
「計画通りに行こう。当日に向けて特訓だ。いいね」
「うん」
 当日は乃蒼のアシストに入る。それまでに腕を上げておかなければならない。乃蒼の使うプロの調理器具は家庭用とは使い勝手が違う。

 料理にはまだ抵抗がある。
 だけど、いつまでも弱いままでいたくない。守られるだけではなく彼の役に立ちたい。

 そのために、集められるだけの勇気をかき集めた結果の計画だった。
 絶対に成功させる。
 陽音はぎゅっと拳を握り、彼を見つめた。
< 36 / 51 >

この作品をシェア

pagetop