ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「お帰りなさい!」
馴染みの事務員たちから歓迎を受け、私は挨拶を済ませてから自席で作業を始めた。
「ホームラン王子だったら、今日は直帰だそうです」
「そうなんだ……」
「ずっと高藤さんと会えるの、楽しみにしてましたよ?」
「あはは……」
どうやら彼は、1年経ってもぶれないらしい。
――私のことなんか忘れて、新しい恋を初めてくれていたらよかったのに。
こちらの都合がいいように動いてくれれば、苦労はしないか……。
私は彼女たちとの話を切り上げ、溜まりに溜まった仕事を一心不乱に片づける。
「高藤さーん。お昼ご飯はー?」
「買ってきたから大丈夫」
久しぶりにオフィスへ顔を出した私は一緒に昼食はどうだと誘われたが、こうなることを見越して事前にコンビニでサンドイッチを買ってきていた。
それを頬張りながら小刻みに休憩を挟みつつ、パソコンに向き合う。
「お疲れ様でした」
「お先に失礼します」
「お疲れ……」
そうこうしている間に夜の帳が下りてきて、17時には事務員たちが帰路につく。
その後も次々に同僚たちが帰宅し、あっという間に社内には私だけが取り残された。