幼なじみのユウくんは、私を抱かない。

3.私の役割

昔からユウくんは、夜中まで友達と遊んでいることが多かった。そのせいで怒られてることも多くて、よく揶揄ってた。でもそれも同じ理由だったのだろうか。

ユウくんを見ると、ソファーに寄りかかったまま目を閉じていた。

「眠いなら寝たら?」

ユウくんは眠そうにしながら体を起こした。

「イチカ……抱きしめてもいい?」
「えっ、抱き、抱きしめ……!?」

「ハグするだけ。だめ?」
「ハ、ハグ!?」

いいよと言う前に、ユウくんは私をふわりと抱きしめた。ユウくんの香りに包まれて、顔が赤くなってしまう。

「眠い……」
「え、あの……えっ──!?」

ユウくんは私を抱きしめたままソファーに横たわった。めちゃくちゃ焦ったけど、気づいたらユウくんから寝息が聞こえてきた。

(な、なんだ……本当に抱きしめるだけか……)

ドキドキしてるのは私だけだ。

こんなに眠いならゲームなんかしてないで早く寝ればいいのにと思ったけど──

(言えなかった……のかな……)

ユウくんはきっと、誰か一緒にいないと眠れないんだ。だから女の人を呼んでる。

でもユウくんは私を抱かない。それ目的で来たわけじゃないから、手を繋いだり抱きしめたりする理由もない。

(だから寝落ちするまでゲームしてたとか……?)

ユウくんとは幼なじみ。長いこと一緒にいて、いろんな話をしてきたけど、こんな思いを抱えていたなんて初めて知った。

私はいい匂いのするお姉さんとは違うけど、ユウくんの力になれてるのかな。

ユウくんはすやすや眠ったまま微動だにしない。私はユウくんの抱き枕となって、そのまま朝になった。
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