幼なじみのユウくんは、私を抱かない。
サークルのイベント終わり。私は繁華街にある居酒屋で、サークルの仲間と打ち上げをしていた。

隣に座っているのは、合同でイベントを開いた別のサークルの後輩。

「イチカさん、二次会行きますか?」
「え?あ、うん……」

今日は二次会までは行っておこうかな。でも──

「イチカさんって彼氏いるんですか?」
「え?」
「俺、イチカさんのこと狙ってるんですけど。」

彼から好意を向けられていることは、薄々感じていた。顔も悪くないし、話も合う。付き合ってもいいかなって思える。

私はスマホの画面をチラリと見た。ユウくんからの連絡は今日も来ていない。

「この後、2人で飲みません?」

そう言われた後、すぐに席替えになった。そして、後輩に返事をすることなく一次会はお開き。外へ出ると、居酒屋の前で幹事が二次会の出席を取っていた。

後輩は私の方をチラチラ見ている。後輩に返事をしなければならない。

(私もそろそろ彼氏欲しいしな……)

いまだに王子様は現れていない。それに、これからいつ現れるのかも未定。

だとしたら、付き合うかどうかは別にして、男子と2人でお酒を飲むことも経験しておいた方がいい気がする。

(行ってみるか。)

後輩のところへ向かおうとして顔を上げた私は目を疑った。交差点の近くで、ユウくんが綺麗なお姉さんと並んで歩いている。

「ごめん。私二次会パスで。」

私は幹事に声をかけてその場から走り出した。
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