ひと夏の経験、五つの誘惑
意識はまだ朦朧としているようで、焦点の定まらない視線が俺をかすめる。
それでも、ふっと小さく笑みが浮かんだ。
「後は俺が付いてるから。」
そう告げると、運んできた生徒たちは安堵した様子で頷き、練習へ戻っていった。
保健室の扉が静かに閉まると、部屋には羽月の浅い呼吸と、時計の秒針の音だけが残る。
「小野、分かるか? 俺のこと。」
呼びかけると、羽月はゆっくりと震える手を伸ばし、俺の腕を掴んだ。
その力は弱々しいが、確かに俺を求めていた。
「……うん。聡志先生でしょ。」
掠れた声を聞いた瞬間、胸の奥の緊張がようやくほどけた。
意識が戻って、本当に……よかった。
ふと見ると、羽月の指先が小刻みに震えていることに気づいた。
「先生……水……」
声はかすれ、今にも消えてしまいそうだ。
まずい、脱水症状かもしれない。
俺は急いで紙コップに水を汲み、ベッド脇に戻る。
それでも、ふっと小さく笑みが浮かんだ。
「後は俺が付いてるから。」
そう告げると、運んできた生徒たちは安堵した様子で頷き、練習へ戻っていった。
保健室の扉が静かに閉まると、部屋には羽月の浅い呼吸と、時計の秒針の音だけが残る。
「小野、分かるか? 俺のこと。」
呼びかけると、羽月はゆっくりと震える手を伸ばし、俺の腕を掴んだ。
その力は弱々しいが、確かに俺を求めていた。
「……うん。聡志先生でしょ。」
掠れた声を聞いた瞬間、胸の奥の緊張がようやくほどけた。
意識が戻って、本当に……よかった。
ふと見ると、羽月の指先が小刻みに震えていることに気づいた。
「先生……水……」
声はかすれ、今にも消えてしまいそうだ。
まずい、脱水症状かもしれない。
俺は急いで紙コップに水を汲み、ベッド脇に戻る。