亡国の聖女は氷帝に溺愛される
「──ファルシさま」

 ルーチェの呼びかけに応えるように、竜の黄金の軀から一度だけ清々しい光が発せられる。その温かな光に、竜は戸惑ったように腹部を見下ろした。

「(──もしや貴様、我の中で生きていたのか)」

 竜が毒々しい爪を鱗に突き立て、線を引くように引き裂く。ずるりと空いた穴からは、目が眩むような光が溢れだした。

 竜が紅い瞳を細めながら、光を掴むように手を入れる。その一瞬の隙を待っていたルーチェは、裂け目へと向かって飛び出し、精一杯の声で叫んだ。

「──ファルシ様ッ!!!」

 ルーチェが伸ばした手に熱が灯ったのと、全てを焼き尽くすような光が生まれたのは同時だった。

 竜の腹から出た光が、どこまでも高く、大空へと伸びていく。

 それは世界に光を配るかのように、真っ暗闇だった世界に光の粒子を降らせていった。

「──……フィオナ」

 春風のような声が、ルーチェになった少女の名を紡ぐ。頷き返した時にはもう、ファルシに抱きしめられていた。

「フィオナッ……!!!」

「ファルシ様っ……」

 ──だけど。

 ルーチェを抱きしめるファルシの腕が、片方だけしかない。
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