亡国の聖女は氷帝に溺愛される
「どういう、ことですか。ファルシ様」

「言葉の通りだよ。私の推測が正しければね」

 ファルシは白い外套をはためかせながら、そうだろう? と竜に投げかける。だが竜は何も言わない。生き延びていた二人を静かに見据えている。

「……沈黙は肯定と受け取るが。構わないのかな」

 ふむ、とファルシは顎に手を添える。

 その瞬間、竜が急に翼を羽ばたかせた。風をぶわりと波立たせながら飛翔し、大きく息を吸い込む。その喉奥から赤い光が生み出されようとしているのを察知したルーチェは、ファルシを押し退けて聖獣の翼を広げた。

「フィオナッ!?」

「イクシオ。あの炎よりも早く、私をあの地に」

 竜の口が炎を放つのと同時に、イクシオの銀色の翼が凄まじい速さで下へと飛んでいく。目も開けていられない速さで空を切ると、ルーチェは地面に舞い降りた。

 そして、片手を突き出す。

 あの日のように。全ての光を集めるように、意識を左手に集中させる。

 瞬きを三つもしないうちに、ルーチェの全てを焼き尽くす勢いで、炎が到来した。

 ──その時。

「──ルーチェッ!!!」

 よく聞き知った声とともに、巨大な鳥の凛とした美しい鳴き声が辺りに響く。

 次の瞬間には、終焉の炎と無数の氷の剣が衝突し、辺りには霧が立ち上っていた。
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