亡国の聖女は氷帝に溺愛される
ヴィルジールを挟んで向かいにいるアスランが、少女の肩を強く押した。
「ジルに触るな!お前がこの国に来たから、あの化け物が現れたんじゃないのか!?」
「そうだぞ!イージスを滅ぼした聖女め」
少女がヴィルジールの手を取ってから、彼を囲んでいた治癒師や騎士たちが非難の声を上げ始めた。初めは触るな、離れろ、何をするつもりだなどといった軽いものだったが、それらは次第に言葉の暴力へと変わっていく。
石を投げつけられる感触がしたが、少女は顔を上げた。
(聖女が何なのかは、よくわからない。でも……)
少女は夜空を仰いでから、目を閉ざしているヴィルジールを見た。その瞼の裏に隠された瞳は、とても冷たくて、強くて、全てを凍てつかせてしまいそうで。
けれど、民を救いに向かった時に見開かれていたそれは、守りたいものを守らんとするひとりの守護者のものだった。
その眼差しを、少女は知っている。ヴィルジールのものではないけれども、同じものを少女も見ていた。側にいた。ずっと傍にいると約束していた。
だけれど、それは……守れなかった。
(わたしはとても大切なものを、護れなかった。それだけは憶えているのです)
少女はヴィルジールに語りかけるように、指先に力を込めた。
「ジルに触るな!お前がこの国に来たから、あの化け物が現れたんじゃないのか!?」
「そうだぞ!イージスを滅ぼした聖女め」
少女がヴィルジールの手を取ってから、彼を囲んでいた治癒師や騎士たちが非難の声を上げ始めた。初めは触るな、離れろ、何をするつもりだなどといった軽いものだったが、それらは次第に言葉の暴力へと変わっていく。
石を投げつけられる感触がしたが、少女は顔を上げた。
(聖女が何なのかは、よくわからない。でも……)
少女は夜空を仰いでから、目を閉ざしているヴィルジールを見た。その瞼の裏に隠された瞳は、とても冷たくて、強くて、全てを凍てつかせてしまいそうで。
けれど、民を救いに向かった時に見開かれていたそれは、守りたいものを守らんとするひとりの守護者のものだった。
その眼差しを、少女は知っている。ヴィルジールのものではないけれども、同じものを少女も見ていた。側にいた。ずっと傍にいると約束していた。
だけれど、それは……守れなかった。
(わたしはとても大切なものを、護れなかった。それだけは憶えているのです)
少女はヴィルジールに語りかけるように、指先に力を込めた。