兄弟の溺愛に堕ちて
会議室に残された私は、ハンカチで涙を拭った。

胸の奥では、一真さんへの想いと、蓮さんの不思議な優しさが絡み合ってほどけない。

たとえ蓮さんの言う「目の前の恋」に手を伸ばしたとしても、私はきっと、一真さんを選んでしまう。

それでも今、こうして寄り添ってくれる誰かの温もりが、少しだけ救いになっている気がした。

しばらくして、会議室の扉が開き、香ばしい匂いがふわりと漂ってきた。

「ごめん、マックでいい?」

蓮さんが紙袋を提げて戻ってくる。頬が少し赤く、息も荒い。

「走って来たんですか?」

驚いて聞くと、彼は当たり前のように笑った。

「だって、美咲さんが待っていると思ったから。」

軽く言ったその一言が、胸の奥にじんわりと染み込んでくる。

何でもないようで、特別に響く言葉だった。

私は気づかぬうちに、彼の背中にそっと額を寄せていた。

温もりと、少し速い鼓動が伝わってくる。
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