兄弟の溺愛に堕ちて
「ああ。」

一真さんは少しも動じず、静かに頷いた。

「俺がつけてしまった。すまない。」

そして、当然のように私の腰を抱き寄せる。

「っ……!」

人目が気になって体が震えた。

「兄貴!」

蓮さんの顔は怒りに染まっていた。

「美咲にこんなことして……ただじゃあ済まないぜ!」

「……ああ。」

一真さんは真っ直ぐに蓮さんを見据える。

「責任は取る。」

その言葉に、私の胸はドクンと大きく脈打った。

——責任って……それって……。

「美咲……」蓮さんの手が伸びてきた。

その瞬間、一真さんがその手を振り払う。

「社長。」

低い声。私の腰に回された一真さんの手は、まるで所有を示すかのように強い。

「行こう、美咲。」

「兄貴!」蓮さんが叫んだ。

「美咲は……俺の……」

一真さんが振り返る。その瞳は氷のように冷たい。

「俺の、何だ。」

ぞくりと背筋が凍る。

「まさか……美咲で遊んでるのか?」
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