マリオネット
「いえ……」

「すみません。話しかけちゃって。じゃあ、陽菜も。またね」
 そう言って翔太郎は、言葉少な目にお店の奥へと歩いて行った。

 私が翔太郎の後ろ姿を見ながら立っていると
「大丈夫?」
 凪は私の手を握って歩き出してくれた。

「せっかく楽しかったのに、なんか嫌な気分になっちゃった」
 なんであんなところにいるんだろ。世の中狭い。

「じゃあ、家に帰ってゆっくりしようか。帰りになんかスイーツ買って、家でゆっくりお茶でもする?」

「うん。する」
 機嫌を損ねた子どもをあやすかのように凪は、いつも以上に優しく接してくれた。

「陽菜乃さんの好きなミスキードーナツでも買って、帰ろうか?」

「うん」
 私は凪の手をギュッと握った。


 自宅マンションに帰り、買ってきた物を片付け、ソファに座る。

「今、お茶の準備するから」
 凪が温かい紅茶を淹れてくれた。
 ドーナツをひと口食べる。

「んっ、美味しい」

 きっと一人で食べていたら、美味しいと感じなかっただろう。
 凪が一緒だからちゃんと味もあるし、美味しいと感じるんだ。

「凪。味違うから、ひと口食べる?」
 ドーナツは全て違う味を買った。

「うん、いいの?」
 はいっと私の持っているドーナツを彼の口元へ。
 彼はそのままパクっとかじった。
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