黒百合の女帝
 工場に入ってから、およそ十分後。

工場を出て、人気のない街を二人で歩く。

まあ、今回は結構楽勝だったな。

ほぼ無傷だし、予想外の出来事もなかった。

満足のいく結果に喜びながら、暗い道を進む。

そんな中、ラクアは私の掌を凝視していた。

 「……どうしたの?」

流石に鬱陶しい為、声を掛けてみる。

すると彼はその場で立ち止まり、眉を顰めた。

そして私の右手を取ると、無言でそれを見つめる。

 「本当にどうしたの……って、もしかして怪我のこと?」

 「痛くないのか?」

 「こんなの怪我にも入らないよ。」

そんな答えを聞くと、私の手を包み込むラクア。


 因みに怪我というのは、軽い切創だった。

確か、暴れた男の刃先が掌を掠ったのだ。

浅い傷口からは、血が出てきている。

しかし傷跡は残らないだろうし、大した怪我でもない。

にも拘らず、彼は過度にその傷を心配した。
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