黒百合の女帝
 「なら、貰う」

 「はいどーぞ。」

穏やかな口調で、俺の手に欠片を乗せるユリ。

貰ったドーナツの一部を口に運び、咀嚼する。

少し生地は硬いが、不味くもない。

甘味に苦手意識はないので、難なく食べられた。

 「美味いな。コーヒーと食べたら丁度良さそうだ」

 「ね!……あっ、そうだ!これ食べ終わったら、お土産も見に行かない?」

 「ああ。問題ない」

そんな会話は、すっかり日常に戻っていた。

この五日間の憂鬱は、どこからも感じられない。

胸を撫で下ろしながら、財布の中身を思い出す。

大金は持ってきていないが……5000円札なら。

彼女も学生だ。高価な品は買わないだろう。

などと考えながら、土産屋に移動した。
< 210 / 227 >

この作品をシェア

pagetop