黒百合の女帝
 お腹をさすっていれば、突然肩を掴まれた。

勢いよく振り向くと、そこにはトシアキくんが。

 「うわっ。ちょっ、脅かさないでよ〜」

 「ごめんって。ヤユくんめちゃビクつくのがおもろくてつい」

愉快にそう笑う彼は、すごく落ち着いている。

僕とは正反対で、すごいなあ。

僕なんか、心臓が口から飛び出そうなのに。

 「トシアキくんは、緊張しないの?」

 「ん?別に」

 「そっか。うん、僕もいつまでもビクビクしてちゃダメだよね」

そう言うと、トシアキくんは首を傾げた。

何か質問されるのが怖くて、即座に立ち上がる。

 「あ、何か飲み物買ってこようかな〜」

適当に理由を付けると、彼は時計を指した。

何かと指先を辿れば、胃が一気に重くなる。

 「そんな時間、もうないんじゃない?」

もう、出発の時間だった。
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