黒百合の女帝
 「棚橋君、その怪我どうしたの!?」

なかった。


 数分前のこと。

いつも通り、用務員室近くの勝手口から校内へ入ろうとした時。

なぜかそこに黒崎がいて、皮が剥がれた右頬を指摘された。

以上。

そして現在、保健室で手当てをして貰っていた。

養護教諭は職員会議に出ているらしく不在。

運が悪いものだ。

大人しく腕を捲り、そこにもできた痣を見せる。

 「派手にすっ転んで階段から転げ落ちたの?」

 「……喧嘩」

ビビれ。そしてどっか行け。

そんな思いでの告白だったが、彼女はさして驚かない。

 「喧嘩するんだ。全身痣だらけって、何して怒らせたの?」

怒らせたんじゃない。

訳もなく、一方的に殴り掛かって来たんだ。

そう脳内でのみ返事をし、口は一切動かさない。

 「それにしても、昨日の掃除でゴミを捨て忘れてて良かった。棚橋君を傷に菌が入らなくて済んだんだから。」
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