癒やしの小児科医と秘密の契約
14.不可抗力
今週のシフトは俊介さんと丸かぶり。ウキウキな気持ちでいたら、莉々花ちゃんとも丸かぶりで少しばかり心が重い。嫌だとは思わないけれど、俊介さんと莉々花ちゃんが楽しそうに会話している姿を見るとモヤモヤするというかなんというか。

「どうしたの、心和ちゃん?」

「いえ、血圧が高くならないようにトマトジュース飲んでるだけです」

「え、うん、そう?」

腰に手を当ててトマトジュースをガブ飲みする私を見て、千里さんが訝しげな顔をする。そんな私の背後から、めちゃくちゃ楽しそうな声が聞こえる。

「佐々木先生ぇ、昔みたいに名前呼んでもいいですか?」

「え、名前?」

「はい、俊ちゃん先生って」

は、はあああああ????

思わずバッと振り向く。ちょっぴり眉を落とした困り顔の俊介さんと目が合った。

「ごめんね、小谷さん。子どもたちが真似するから、佐々木先生って呼んでもらえるかな?」

「はあい」

ちょっと待って、俊ちゃん先生ってなんですか……。私だってつい最近やっと『俊介さん』って呼べたところなのに。ぐぬぬ……と歯を食いしばっていると、千里さんに「落ち着いて」と笑われた。

見ればトマトジュースの缶が少し凹んでいる。無意識に握りつぶそうとしていたみたいだ。

俊介さんのことは信じているし、先日だって想いを確かめ合ったばかり。莉々花ちゃんは俊介さんに絡んでいくけれど、俊介さんはちゃんと対処している。だから何も心配することなんてないはずなのに。

……わかってる。これは醜い嫉妬だって、わかっているんだ。俊介さんと同じ職場で働く以上、俊介さんが他の誰かと話をしたり笑顔を向けているのを見るのは仕方のないこと。俊介さんが皆に優しいのは周知の事実だし、そうであってほしいと思うけれど。やっぱり少しはモヤモヤしてしまうわけで……。

「私、性格悪いのかも」

「心和ちゃんが一喜一憂してるのを傍から見て笑ってる私が一番性格悪いと思うよ」

「千里さん、他人事だと思って」

「ごめんごめん、だって心和ちゃんが可愛いんだもん」

膨れっ面の私を、千里さんは思い切り笑い飛ばした。
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