100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月12日、日曜日

 夕方、宿題をしていたらスマホが震えた。

 表示されたのは一ノ瀬の名前で、ニャインじゃなくて通話だ。


「……はい」


『あ、柊! 今いい?』


「ちょっとね。宿題してるから」


『昨日ありがと。柊が応援してくれたから、勝てた』


「一ノ瀬活躍してたじゃん。私がいなくたって……」


『いーや、柊が応援してくれたから活躍できたんだ。ありがと、来てくれて』


「……いいよ、別に」


『ね、勝ったからほめて。ご褒美ほしい』


 何それ。

 ご褒美……?


「何がほしいの?」


『言っといてあれだけど、くれると思ってなかったから考えてなかった。ハグとチュー』


「せ、セクハラ……!」


『ごめん。それは58日後に。あ、この間薦めてもらった本読んだよ。東野圭吾。面白かったから、明日の昼に一緒に図書室行こう。それで、またなんか薦めてよ。それがご褒美」


「いいけどさ」


 なんか誤魔化された気がする。58日後もハグもチューもしないよ。

 ……しないよ……?

 スマホの向こうでは一ノ瀬が嬉しそうに本の感想を言っている。

 相づちを打って、「そこ、いいよね。あとさ、その続きのとこが……」なんて返事をする。



 ……別に、楽しくないし。

 その本が好きなだけだし。
< 42 / 96 >

この作品をシェア

pagetop