100日後、クラスの王子に告白されるらしい

11月08日、土曜日

「……ってことがあったんだ」

『あらら……』


 昼過ぎ、結から『今日、準決勝って聞いたけど、応援行かないの?』ってニャインが来たから、つい電話しちゃった。

 水曜日にメイサちゃんから話しかけられたことから、一ノ瀬が告白されてたこと、昨日のこと。

 結は最後まで聞いてから、うなり声を上げた。


『んー……、莉子ちが嫌になっちゃうのはわかるけど……。一ノ瀬、本気に見えたんだけどなあ』

「本気で好きな相手の前で、他の女の名前を繰り返さないでしょ」

『莉子ち、メイサちゃんのこと、もう嫌いになっちゃってるでしょ』

「……そもそも知らないし。一ノ瀬が話しかけてきたと思ったら、割って入ってきたんだよ……」

『あはは、それだけ聞くとウザいかもね』

「もう、どっちの顔も見たくない」

『えっとさ、莉子ちは一ノ瀬にどうしてほしい?』

「わかんない」

『もし、一ノ瀬が本気だったとしてさ、付き合うなら、どうしてほしい?』

「……私の前でメイサちゃんの話しないでほしい」

『それ、言いなよ』


 一ノ瀬が本気かどうかもわからないのに、そんな訳わかんないワガママ言えないよ。

 ……結局、一ノ瀬にとってメイサちゃんがなんなのかも分かんなかったし。


「……あ、一ノ瀬からニャイン来た」

『マ?』

「負けたってさ」

『あらら』


 『あと31日』って書いてあるけど、まだ、続ける気なのかな。



『んー、でもさ』


 結がゆっくりと話を続けた。


『言わなきゃ、伝わんないよ』

「……うん」


  カンガルーのぬいぐるみが、腕の中で私を見上げている。
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