桜吹雪が舞う夜に

信頼 Sakura Side.


バイトが終わった後、そのまま神楽坂にある日向さんの家へと足を向けた。
夜風は冷たく、身体の奥まで沁み込んでくる。
時計を見れば、もうすぐ終電が出る時間。
こんな時間に押しかけたら迷惑かもしれない……何度もそう思い直そうとした。

それでも足は止まらなかった。
ただ、どうしようもなく会いたかった。

家の前に立った瞬間、胸の鼓動がうるさいほど鳴る。
震える指でスマホを取り出し、彼の番号を押した。

――プルルル。

「……桜?」
受話口から聞こえた彼の声に、喉が詰まる。

「……あ、の。日向さん……今、神楽坂に、いて」

「あれ。もしかして家来る?言ってくれれば迎えに行ったのに」
優しい声が夜気を和らげる。

「いいよ。鍵持ってるだろ。入って」

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