大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。
第26話 背中合わせの信頼
午後三時。社内の大きな会議室は、緊張感に包まれていた。
朱里と嵩は、来週に控えた大型クライアント向けの企画提案を、社内でリハーサルする役を任されていた。
(落ち着け……今日は大事なチャンスなんだから)
朱里は手元の資料を握りしめる。
「中谷さん、準備は?」
隣に座る嵩の声が、不思議と安心感を与えてくれる。
「はい……大丈夫です」
小さくうなずくと、嵩は目だけで「信じてるよ」と伝えるように微笑んだ。
プレゼンが始まると、二人は驚くほど息が合った。
朱里がデータを説明すれば、嵩が具体例を補足し、嵩が方針を示せば、朱里が数字で裏付ける。
まるで、背中を預け合って戦っているような感覚。
朱里はふと、自分の声がいつもより自然に出ていることに気付いた。
発表が終わると、上司が感心したように言った。
「いいコンビだな、中谷、平田。安心して任せられる」
「ありがとうございます」
朱里は頭を下げながら、心臓がどくどくと音を立てるのを感じていた。
(……“コンビ”。そんなふうに言われるなんて)
会議室を出た後、廊下ですれ違いざまに嵩が小声で言った。
「中谷さん、今日の君は本当に頼もしかったよ」
その一言で、朱里の胸は熱くなる。
「べ、別に……ただの仕事ですから」
思わず口を突いて出た言葉は、やっぱり素直じゃない。
でも、心の中では――
(大嫌いって言いたくなるくらい、ほんとは好きなんだ)
朱里は資料を抱きしめるようにして、机に戻っていった。
朱里と嵩は、来週に控えた大型クライアント向けの企画提案を、社内でリハーサルする役を任されていた。
(落ち着け……今日は大事なチャンスなんだから)
朱里は手元の資料を握りしめる。
「中谷さん、準備は?」
隣に座る嵩の声が、不思議と安心感を与えてくれる。
「はい……大丈夫です」
小さくうなずくと、嵩は目だけで「信じてるよ」と伝えるように微笑んだ。
プレゼンが始まると、二人は驚くほど息が合った。
朱里がデータを説明すれば、嵩が具体例を補足し、嵩が方針を示せば、朱里が数字で裏付ける。
まるで、背中を預け合って戦っているような感覚。
朱里はふと、自分の声がいつもより自然に出ていることに気付いた。
発表が終わると、上司が感心したように言った。
「いいコンビだな、中谷、平田。安心して任せられる」
「ありがとうございます」
朱里は頭を下げながら、心臓がどくどくと音を立てるのを感じていた。
(……“コンビ”。そんなふうに言われるなんて)
会議室を出た後、廊下ですれ違いざまに嵩が小声で言った。
「中谷さん、今日の君は本当に頼もしかったよ」
その一言で、朱里の胸は熱くなる。
「べ、別に……ただの仕事ですから」
思わず口を突いて出た言葉は、やっぱり素直じゃない。
でも、心の中では――
(大嫌いって言いたくなるくらい、ほんとは好きなんだ)
朱里は資料を抱きしめるようにして、机に戻っていった。