大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。

第28話 ショッピングモールの午後

週末の昼下がり。
人で賑わう駅前の大型ショッピングモールに、嵩と瑠奈の姿があった。

「ここ、最近できたんですよ。結構お店も多いから、一度来てみたかったんです」
瑠奈が嬉しそうに先を歩き、嵩はその後ろを追いかける。
彼女のワンピースが軽やかに揺れるのを、嵩はつい目で追ってしまった。

まず立ち寄ったのは、アパレルショップ。
「嵩さん、こういうジャケット似合うと思いますよ」
「え、俺に?」
半信半疑で試着室に入ると、案外悪くない。
鏡に映る姿を見ていると、瑠奈が横から顔を出した。
「やっぱり!少し大人っぽく見えます」
「……そうか? なんか照れるな」
普段職場では見せないやりとりに、2人の間に柔らかな空気が流れる。

次に雑貨店へ。
瑠奈は可愛いマグカップや小物を手に取り、子どものように目を輝かせている。
「これ、ペアで揃えたら可愛いですよね」
「お、おう……」
その言葉に嵩の心臓が跳ねる。
彼女にとっては何気ない一言でも、嵩には特別な意味を帯びて聞こえた。

最後に立ち寄ったのは書店。
「映画の原作、ここにありました!」
「へぇ、読むのも好きなんだな」
「はい。嵩さんは?」
「俺はビジネス書ばっかりだな」
「真面目すぎです。今度、おすすめ貸しますね」
笑う瑠奈の横顔を見て、嵩はふと「恋人同士みたいだな」と思ってしまう。

夕方になり、モールの外に出ると、空はオレンジ色に染まっていた。
「今日はすごく楽しかったです。また一緒に来てもいいですか?」
瑠奈の問いかけに、嵩は迷わず頷いた。
「もちろん」
その返事に瑠奈は小さく微笑む。

賑やかな休日のひとときは、2人の距離をまた少し縮めていた。
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