本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 彼女によると朝、目覚めた瞬間から戦いははじまるという。子どもを起こし着替えさせ、朝食を食べさせる。ひとつひとつの動作が思うように進まず、靴を履くのに数分、食事を終えるのに予想外の時間がかかる。時間に追われながらも、決して急かしすぎてはいけない。そのバランスを取るのは親にとっての試練なんだとか。

 街で子連れの家族を見てもそう。レジ前で「これ買って!」と泣き叫ぶ子どもと、それをなんとか説得しようとする親。お菓子やおもちゃコーナーが、小さな戦場と化していることもある。

 そういった場面を見るにつけ、子育ては世界でもっとも難しい仕事だと思わされてきた。


 「嫌いってわけじゃないんだけどね。不慣れって言ったらいいのかな」
 「まぁそれは多くの人がそうだとは思うけどね。年の離れた弟妹や親戚の面倒を見ていたとかでもなければね」
 「自分が腹を痛めて生んだ子どもならまだしも、いきなりでっかいのがいるんだぞ? 無理に決まってる」


 航希はテーブルを拳でトンと叩いた。その振動で皿が小さくカチャンと音を立てる。


 「そうなんだけどね……」


 二十九歳の誕生日から三連敗したプロポーズ以降、莉乃の中で考えていることがある。
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