本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 莉乃が笑ったそのとき玄関のドアが開き、通いの家政婦が顔を覗かせた。


 「おかえりなさませ。旦那様はリビングでお待ちになってます」
 「ありがとうございます」


 ここへ来るのは正月ぶり。変化は特になく、玄関に飾られた花が梅からアジサイに変わっているくらいだ。

 リビングとして使っている和室には、父、(ひろし)が座椅子に腰を下ろして待ち構えていた。

 来年還暦を迎える浩は静かな威厳をまとい、莉乃たちに鋭い眼差しを向けてきた。深い皺が刻まれた顔立ちはただ年齢を重ねた者のものではなく、数々の決断を下してきた者の証だ。
 髪はすっかり銀色に変わり、短く整えられている。それでもどこか頑固さを感じさせる毛流れが残っているのは、彼の気質そのものだろう。口元には厳しさが滲み、微笑むことを忘れたかのような薄い唇が硬く閉ざされている。

 ワイシャツの襟を正しながら、じっと相手を見据えるその仕草は、いっさいの甘さを許さない。気難しいという言葉では片づけられない、強固な意志が滲み出ていた。


 「お父さん、お待たせ」
 「ああ。ふたりとも座りなさい」
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