本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 昼食を手軽に済ませ、メイクなおしをして社長室へ戻ってすぐ、航希が『山城(やましろ)不動産』の社長を連れて入室した。


 「山城社長、お忙しいところご足労いただきましてありがとうございます」
 「いえいえ、ちょうどこの近くで仕事がありましたので」


 山城健吾(けんご)、四十一歳。ヨーロッパの彫刻のような彫りの深い顔立ちに、口角にだけ笑みが形を作る。目はそれに呼応せず、相手の反応を密かに伺うように動いた。

 山城不動産は都内の不動産業界において、ひときわ異彩を放つ会社である。規模こそ大手には及ばないものの仕事ぶりは決して劣らず、むしろ市場に影響を与えるほどの力を持っている。
 その強みはスピードと独自の戦略だ。大手が慎重に進める交渉を、この会社は驚くほどの瞬発力でまとめ上げる。未公開の土地情報が入り次第、迅速に動き、最適な買い手と売り手をつなぐ。その手際は鮮やかで、業界の関係者たちもついその動向を追いかけずにはいられないと聞く。

 実店舗を構えるにあたり不動産会社を探していたところ、山城のほうから接触してきた。耳の速い会社だから、ルナリアが店舗を探している情報をどこからか掴んだのかもしれない。


 「どうぞお掛けください」
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