専属ボディガードへの片思いを諦めたら、甘すぎる豹変が待っていました

「うーん、そうかな?
お見合い相手なんだから、そんなもんじゃないかな」

恋愛経験が乏しいから、
正直早いかどうかなんて判断できないが、
お見合い相手として考えれば、そんなに早くない気がする。

「俺は…百合子に下の名前で呼ばれたことなんてない」

ーなんで辛そうな顔で、そんなことを言うのだろう。

「だって、橘が呼んでほしいと思ってないでしょう?
悟さんは呼んでほしいと言ってたから」

ー橘は無言のまま俯いて何も言ってこなかった。

「もう今日は帰るね」

私が自分でドアを開けて、帰ろうとしたら橘も着いてきた。

どうやらいつも通り部屋の前まで送ってくれるようだった。

「おやすみ、百合子」

ーまたも辛そうで、
まるで下の名前で呼んで欲しそうだと勘違いしそうな表情をしている。

「おやすみ、橘」

そんなことは気のせいだと自分に言い聞かせ、いつも通りの呼び方で別れた。


ーあれから、橘の様子が少しおかしくなった。

何かにつけて、私を下の名前で呼び、
なぜか私が名字で呼び返すと悲しそうな表情をしていた。

ーなんでだろう。
妹みたいに思っていても、他の人と仲良くするのは嫌なものなのかな?

橘の気持ちが全然わからなかった。

悟さんとメッセージをやり取りするようになり、
橘が運転してくれている間に携帯を触るようになってからも、おかしかった。

悟さんのメッセージのやり取りも面白いし、変なスタンプを使っていて、
思わず笑ってしまうことがあった。

私が車の中で携帯を見ながら、
また笑いそうになると、
橘はどんどん不機嫌になっていくのがわかった。

そんな日が続いたとき、
橘に「そんなに携帯が面白いのか?」と尋ねられた。

「あ、悟さんが面白いスタンプを使ってて…」

「あいつのこと好きなのか?」

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