俺の先輩自称殿−本当のお名前なんですか?‐
美しい顔に満面の笑みを浮かべて、巫女さんが言う。

「本当、ドウちゃんの言う通りね。
殿って、見た目だけじゃなく中身も素敵だわ」

ドウちゃんっていうのは、もしかしなくても剣道の、ドウですか?


言われた剣道さんは、がくりと椅子からずり落ちそうになった。
長い付き合いなのだろうから、剣道さんは【殿の中身はろくでもない】ということを存分に知っているはずだ。
しかし、大人なのであえて何も反論しない道を選んだようだ。凄い。
一瞬、剣道さんの瞳に腹黒さを色にしたようなものが滲んだことには、気づかなかったことにしておこう。

「本当、剣道も隅に置けないなぁ。
こんな可愛い子を俺に隠しているなんて。
まぁ、俺が知ったら最後、絶対に君を幸せにしてやるぜ、ベイベ」

キラリン、という効果音が似合う笑顔で殿が言う。一般人には恥ずかし過ぎて、決して浮かべることが出来なさそうなほどに、まばゆい笑顔だ。
いろんな意味で目が眩みそう。

「去年同じクラスだったでしょ?
なんであんた達どっちも全然記憶にないわけ?」

決して冗談とは思えぬ剣道さんのぼやきは、意気投合した二人の耳には全く入ってないようだった。
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