北へ
21日目
川の流れは重く、冷たさを孕んでいた。
京は橋の上に立ち、渡ろうとした足を途中で止める。

風が吹き抜け、衣の裾を揺らす。
手にしていた地図が指の間で震え、しばし迷うように揺れ動いた。

次の瞬間、京は地図を手放した。
紙は夜の川面へと落ち、すぐに闇に溶けていった。

橋の向こうに歩を進めることはしなかった。
京は静かに踵を返し、川から離れていく。

選んだのは南ではなく、北だった。
その足取りには言葉にならない決意が宿り、月明かりだけがその背を照らしていた。

しばらく歩くと、広がったのは荒れ果てた街だった。
壁は崩れ、窓は砕かれ、影だけが瓦礫の間に落ちている。
人の気配はなく、ただ廃墟だけが静かにそこにあった。

京は一歩を踏み入れ、足を止めた。
この場所には、過去の痕跡はない。
そう思わせるような虚無の広がりだけが、冷たく漂っていた。

希望と不安――相反するものを抱えたまま、京は再び歩き出す。
その背を追う者は誰もいない。
ただ夜風と月明かりだけが、彼の行く先を静かに見守っていた。
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