君か教えてくれたこと
教室に戻ると、騒がしくはあるけどみんな自分の席についていて、私の席もお陰様で帰って(?)きた。


「ふぅ…」

「ねぇ」


隣から聞こえた声に反射的に視線を向ける。
頬杖を着いてこちらを見るのはさっきまで私の座るこの席にいた〝突っ伏し男子〟だっだ。


改めて見ても綺麗な顔。色素が薄いのは髪だけじゃなく、瞳も逆光でもわかるくらい綺麗な色をしていた。
長いまつ毛の奥に光る瞳は、気だるそうなのに何故か惹き付けられて逸らせない。


「ねえって」

「…ぇ、あ、はい」


やば、ぼーっとしちゃった。
初めて何かに見とれたかもしない。


「名前、何ていうの?」

「…えっとぉ」


名前?な、なんで…?
まさかさっき席を間違ってることを指摘したから…シメられる?

さっきの群がってた女の子たちとか、体育館での様子からするにこの人は有名な人っぽいし…あんまり関わりたくないかも…。


どうやって切り抜けようか考えてると、


「おー全員席ついてるなぁ、ちゃっちゃと終わらせるから前向けぇ」


突然の教室の前方から大きな声がした。
思わぬ逃げ道にラッキーと思いつつ声の方を向くと、スーツを着崩した20代後半くらいの男の人が立っていた。


「担任の平林だ。よろしくー。配布物とか諸々明日やる。その時に自己紹介だのもやってくから、今日はもうお終いだ。親御さんやらオトモダチやらと写真撮ったりしなさい。んじゃ、解散、起立ー」


一息に指示を出し切ってあっという間に終わったHR。
な、なんだったんだ…。
とにかく、また話しかけられる前に教室を出よう…


空っぽなカバンをつかみ立ち上がると、
甘ったるい香水が鼻を擽る。


「八神くーんっ♡」


と言いながら集まってきた女子によって、あっという間に『八神』と呼ばれた隣の男子は取り囲まれていた。


…よし、帰ろう。
どうせ明日名前もバレるけど、とりあえず帰ろう。
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