ふたりはミラクルエンターテイナー!

4.

「あたしはアナ! ここはあたしたちのものよ、そうよねミナ?」
 赤いチューリップのぼうしをかぶった女の子が言いました。
「うん、おねえちゃんの言うとおり! アンタたちなんかに、ここのお花は一本もわたさないんだから」
 青いチューリップのぼうしをかぶった女の子が、うんうんとうなずいています。
「なによ、ケチねぇ。あたしたちはティアラに使うお花がほしいだけなのに」
 モエが口をとがらせると、黄色いチューリップのぼうしをかぶった女の子が、
「ここはあたしたちのダンスフロアなの。このあたし、ユナのお気に入りの場所に、ジャマものはぜったいに近づけさせないわ」
 と、キッパリ。
「ダンスフロア?」
 きょとんとしているネルに、
「そうよ! ここはあたしたちがおどるのにサイコーなの」
 アナたち三人の妖精はニヤッと笑いました。
 すると、モエがサッと手をあげて。
「それなら、ダンス対決しましょう! あなたたちが勝ったら、ここから帰るわ。でも、あたしたちが勝ったらお花を分けてちょうだい」
「えぇーっ!? ダンス?」
 これにはネルもびっくり。
「おもしろいじゃない。受けてたつわ。じゃあ、たくさん回れたほうの勝ちよ。まぁ、あたしたちにかなうはずないけどね!」
 三人の妖精は、くるくるとおどりはじめました。
 そのダンスのみごとなこと。少しのリズムのみだれもありません。
「なかなかやるわね。でも、負けないわよ!」
 今度はモエが、かれいなターンを見せました。
 プリンセスらしくゆうがな、でも力強いダンスです。
「よーし、オレも! あれっ、目が回る~」
 パンぞうも、いっしょにおどろうとしましたが、あっという間にヘロヘロになってしまいました。
 モエと三人の妖精たちはとてもいい勝負です。
 どちらが勝ってもおかしくありません。
 負けないで、モエ……!
 ネルは、かたずをのんでモエのダンスを見守っていました。
 ところが――。
「あっ!」
 急にモエがよろけました。ドレスのすそに足がもつれてしまったのです。
 モエはドサッ! と花畑につまずいてしまいました。
「モエ、大丈夫?」
 ネルが心配そうにモエにかけ寄ると、三人の妖精たちの笑い声が聞こえました。
「勝負あったわね」
「やっぱりここはあたしたちのものよ」
「あきらめて帰りなさい」
 その言葉を聞いて、モエは立ち上がろうとしました。
「まだ平気よ、ティアラに使うお花を持って帰るんだから……」
 しかし、モエの顔はつらそうです。ひたいには汗がじっとりにじんでいます。
< 14 / 26 >

この作品をシェア

pagetop