罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

消えない気持ち

それから2週間経って僕と悠人、琉偉は近くのカフェでゆっくりと過ごしていた。

「なるほどね〜。でもさ、蒼唯はそれでいいわけ?なにも諦めることなんて…」

僕は琉偉に黒羽さんとの会話などを伝えたんだ。
なんとなく、言っておく必要を感じたから。
ずっと心配されてたしね。
まあ、琉偉に告白もされてるしなんとなく。

「うん、いいんだよ。だってもう、月海くんには友達としての感情しか残ってないし」

「じー。……はぁ〜。まあ、蒼唯がそれでいいんならいいけどさ」

まだ疑うような目を向けてくる。
でも、僕は動じない。
ここで動揺を見せたら終わりだ。
この気持ちは早く捨てないとなんだから、せめて自分でも誤魔化せるようにならなきゃ。

「卯月様、蒼唯様をあまり詮索(せんさく)しないでください。困っていますので」

「あー、ごめんごめん」

悠人にそう言われると琉偉はそんな感じで、軽く謝ってきた。
助かった…。

「あ、そうだ!なあ蒼唯、今から一緒に遊びに行こうぜ!!この前親父に水族館のチケット3枚もらったんだよねー。ちょうどよくね?」

「え、それって私もですか?」

「もちろんでしょ」

僕は少し考える。
たしかに水族館には行きたいし、悠人もいるなら安心かな。
そう思って返事をする。

「悠人が行くなら僕も行くよ」

「だってさー、悠人くん。どうするのかな〜?蒼唯は行きたそうだけど〜?」

わざとらしい琉偉の呼び方にため息をつきながらも、頷いてくれた。

「わかりましたよ。行きましょう」

その後悠人が車を出してくれて、みんなで水族館に向かった。

***

「いやー、楽しかった!!まさか最前列あんなに濡れるとはな〜。悠人のおかげでマシだったけど」

最終時間のイルカのショーに出て、僕達は帰るところ。
イルカショーは1番人気なはずなのに、最前列が空いてるのが不思議だったけど…。
まさかあんなに濡れるからだとは思わない。
悠人がカッパを貸してくれて助かった。

「風邪をひかないよう、家に帰ったらシャワーを浴びてくださいね」

「はーい」

琉偉はそう言って笑った。
僕も一応頷いておく。

それから、悠人は車を出してくると言って駐車場へ行った。
今は琉偉とふたりきりだ。

「なあ、蒼唯」

「ん?なに?」

不意に話しかけられたので、僕はとっさに返事をする。

「月海くんへの気持ちを諦めたってことはさ、俺が蒼唯と付き合える可能性があるってことだよね?」

僕の手をとって、恋人つなぎをしてくる。
なんとも言えない甘い雰囲気に、僕はなにも言えなくなった。

「改めて、好きだよ蒼唯。俺と付き合わない?」

琉偉のことは嫌じゃない。
ずっと前から一緒にいて、僕を罪の子としても扱わずに仲良くしてくれる。
琉偉以上にいい人なんか現れないかもしれない。

「なーんて、嘘だ——」

「いいよ。付き合っても」

「…え?」

琉偉のありえないって顔が僕の瞳に映った。
そして、僕はやわらかに笑った。

「僕はまだ琉偉に恋愛感情は抱いてないけど、意識してみる。それでいいなら」

「蒼唯…」

琉偉は真剣な表情で顔を近づけてきた。
きっとキスをするんだ。
僕はそうわかって、目を閉じた。


唇が重なる瞬間にも思い出したのは、月海くんの笑顔で。


僕はなんてひどいんだろう。
そうして、唇が重なった。
でも、なにかがおかしい。
違和感を覚えた僕は、ゆっくりと目を開けた。
目の前にいたのはここにいるはずのない月海くんで、僕は彼とキスをしていた。

「っ…!?」

「蒼唯が卯月のことが好きでも、絶対渡せない」

そう言って月海くんは琉偉を睨んだ後、強引に僕の手を引っ張ってどこかへ歩き出したのだった。
< 25 / 32 >

この作品をシェア

pagetop