罪な僕は君と幸せになっていいだろうか
噂
その日の授業は、久しぶりにあまり集中できなかった。
もちろん授業内容は理解できているし問題はない。
そうではなく、集中できなかった理由が問題なのだ。
でも、僕の態度は適切だったはず。
彼に近づいてはいけないと思うから。
「鷹栖、まだ残ってたのか。悪いが、この資料特進クラスの先生に渡してきてくれないか?先生はこの後会議があってなー」
今日は定例会議もなくて早く帰れる日だった。
たまたま日直の仕事があって残っていただけだ。
先生に頼まれたことだから、ここは生徒会長としてせざるをえない。
「はい、大丈夫ですよ。渡してきますね」
「すまんなー。教室にまだいる時間だから、頼むぞ」
先生から資料を受け取って、カバンを持って教室を出た。
今日は予定がないから少しゆっくりでいいけど、外で悠人が待ってるはずだから急ごう。
早歩きで廊下を進み、特進クラス棟に来た。
手前のクラスから入って、先生方に資料を渡していく。
順調に資料を渡すことができて、最後の教室に来た。
もう生徒達は帰っていていい時間だけど、この教室にはまだ生徒が残っていたみたい。
担任の先生もいないみたいだし、生徒に頼んで渡してもらおうと思ったけれど…。
教室内の生徒の声を聞いて僕はとっさに隠れてしまった。
「会長の秘密みたいなの、お前知ってる?」
「秘密…?噂とかなら知ってるけど」
「マジ?それ、教えて欲しいんだけど!」
僕の話をしているところに入るのは嫌だ。
それに、この話題は気まずくなるし。
特に月海くんがいるんじゃ、入りたくない。
「お前しらねぇの?なんかあれだろ?体売りしてるって」
「…」
ああ、その話か。
僕の容姿からみんな体売りをしてるって言う。
噂に嘘か本当かは関係なくて、面白みがあるかどうかだから。
「それ、本当なのか?でもなんで…」
知られたくない。
どうしてかそう思ってしまって、僕はその場から立ち去った。
それを見られていたのか、すぐに後ろから月海くんの声が聞こえた。
「会長!」
その声を聞いて、僕は焦って階段をおりた。
「っ…!待ってって!!鷹栖!」
「…」
鷹栖、そう呼ばれた瞬間僕は足を止めた。
両親にも名前を呼ばれたことはないし、みんなにも会長としか呼ばれないから。
だから、驚いただけだ。
「意外と足速いのな。止まってくれてよかった」
「…聞いてたのは謝るよ。それで?どうして僕を追いかけてきたの?」
できるだけ冷静に、僕は振り返った。
いつものように彼に笑顔を見せる。
「俺さ、正直鷹栖が体売りしてるとかありえないって思ってる。俺は今までこの目で見てきた“鷹栖蒼唯”を信じたいからさ」
「言ったでしょ?君は僕を知らないから、そういうことが言えるんだよ」
「……そんな顔、するなよ…」
そう言って月海くんは僕のほほに触れた。
その手が想像以上にあたたかくて驚いた。
「悲しそうに笑うなよ。俺は鷹栖を信じるからさ、話してくれないか?」
「……嘘だよ」
僕の噂を知ってる人は、みんな近寄らないんだ。
罪の子の僕を許してはくれない。
きっと彼も…。
「じゃあ、試してみて。信じられなかったら全部忘れるからさ」
「…」
試してみる?
でもそれでまた幻滅されたらと思うと、胸が苦しくなる。
知らないままの方が幸せだろう。
「お願い!」
「わ、かった…」
「ほんと?!」
僕はうなずいてしまった、いやうなずいた。
彼を信じてみようと思ったから。
月海くんの笑う顔を見て、僕の心臓はトクンと音を立てた。
もちろん授業内容は理解できているし問題はない。
そうではなく、集中できなかった理由が問題なのだ。
でも、僕の態度は適切だったはず。
彼に近づいてはいけないと思うから。
「鷹栖、まだ残ってたのか。悪いが、この資料特進クラスの先生に渡してきてくれないか?先生はこの後会議があってなー」
今日は定例会議もなくて早く帰れる日だった。
たまたま日直の仕事があって残っていただけだ。
先生に頼まれたことだから、ここは生徒会長としてせざるをえない。
「はい、大丈夫ですよ。渡してきますね」
「すまんなー。教室にまだいる時間だから、頼むぞ」
先生から資料を受け取って、カバンを持って教室を出た。
今日は予定がないから少しゆっくりでいいけど、外で悠人が待ってるはずだから急ごう。
早歩きで廊下を進み、特進クラス棟に来た。
手前のクラスから入って、先生方に資料を渡していく。
順調に資料を渡すことができて、最後の教室に来た。
もう生徒達は帰っていていい時間だけど、この教室にはまだ生徒が残っていたみたい。
担任の先生もいないみたいだし、生徒に頼んで渡してもらおうと思ったけれど…。
教室内の生徒の声を聞いて僕はとっさに隠れてしまった。
「会長の秘密みたいなの、お前知ってる?」
「秘密…?噂とかなら知ってるけど」
「マジ?それ、教えて欲しいんだけど!」
僕の話をしているところに入るのは嫌だ。
それに、この話題は気まずくなるし。
特に月海くんがいるんじゃ、入りたくない。
「お前しらねぇの?なんかあれだろ?体売りしてるって」
「…」
ああ、その話か。
僕の容姿からみんな体売りをしてるって言う。
噂に嘘か本当かは関係なくて、面白みがあるかどうかだから。
「それ、本当なのか?でもなんで…」
知られたくない。
どうしてかそう思ってしまって、僕はその場から立ち去った。
それを見られていたのか、すぐに後ろから月海くんの声が聞こえた。
「会長!」
その声を聞いて、僕は焦って階段をおりた。
「っ…!待ってって!!鷹栖!」
「…」
鷹栖、そう呼ばれた瞬間僕は足を止めた。
両親にも名前を呼ばれたことはないし、みんなにも会長としか呼ばれないから。
だから、驚いただけだ。
「意外と足速いのな。止まってくれてよかった」
「…聞いてたのは謝るよ。それで?どうして僕を追いかけてきたの?」
できるだけ冷静に、僕は振り返った。
いつものように彼に笑顔を見せる。
「俺さ、正直鷹栖が体売りしてるとかありえないって思ってる。俺は今までこの目で見てきた“鷹栖蒼唯”を信じたいからさ」
「言ったでしょ?君は僕を知らないから、そういうことが言えるんだよ」
「……そんな顔、するなよ…」
そう言って月海くんは僕のほほに触れた。
その手が想像以上にあたたかくて驚いた。
「悲しそうに笑うなよ。俺は鷹栖を信じるからさ、話してくれないか?」
「……嘘だよ」
僕の噂を知ってる人は、みんな近寄らないんだ。
罪の子の僕を許してはくれない。
きっと彼も…。
「じゃあ、試してみて。信じられなかったら全部忘れるからさ」
「…」
試してみる?
でもそれでまた幻滅されたらと思うと、胸が苦しくなる。
知らないままの方が幸せだろう。
「お願い!」
「わ、かった…」
「ほんと?!」
僕はうなずいてしまった、いやうなずいた。
彼を信じてみようと思ったから。
月海くんの笑う顔を見て、僕の心臓はトクンと音を立てた。