反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
第9章 隠された気持ち
「おはよう」
「おはよう」

 次の日。
 夏樹は、いつもと変わらない顔で私に声をかけた。

 その何気ない「おはよう」に――ホッとしたような、でも少しだけがっかりしたような気持ちになる。

 昨日のこと、夏樹はどう思ってるんだろう。
 あの写真を撮ったとき、すぐそばにあった距離を、私だけが意識してたのかな。

「それでさ――」
 いつも通りのたわいもない会話をしていたそのとき。

「夏樹くん、ちょっと小春かりるよ!」

 突然、凛の声が教室に響いた。
 私の腕をつかんで、ぐいっと廊下へ連れ出す。

「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ!」

 凛は頬をぷくっとふくらませて、真剣な顔。

「文化祭のこと、全部話して!」
「え、全部って……?」

「文化祭の! あの“チャイム事件”! 夏樹が小春の腕掴んで連れ出したって、みんな言ってたけど?」
 凛が目を輝かせながら身を乗り出す。

「えっ、うそ、そんな噂になってるの!?」
「なってるなってる。だって、あんなドラマみたいなこと普通ないでしょ!」

 小春は頬を真っ赤にしながら視線を泳がせる。
「ち、違うの! ただ、ちょっと誤解されただけで……!」

 凛はわざとらしく顎に手を当ててうなずいた。
「なるほどねぇ。じゃあ――」
 いたずらっぽく目を細める。
「つまり、それで“付き合った”ってこと、だよね?」

「え?」
「え?」

 二人の声が重なる。

 凛がきょとんとし、小春は慌てて手を振る。
「つ、付き合ってないよ!?」
「え、うそでしょ!? だってあれ、完全に告白イベントじゃん!」
「そんな話してないもん!」
 小春は真っ赤になって、手で顔を隠した。

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