再会した初恋の幼馴染との距離が近すぎて困ってます! ~離れて初めて気付く恋~
prologue
「俺、東京の大学行くわ」
えっ。
彼のその一言で、私の頭は真っ白になった。
「あれ、えーっと、何大学だっけ……」
いつもなら、「いや、自分の行く大学なんだからちゃんと名前覚えてろよ」と頭を叩いているところだ。
だけど、今の自分にはそれが出来なかった。
「私が行くところと、違うんだ……」
「父ちゃん、東京に転勤が決まってさ。東京にはばあちゃん達いるしもう歳だから家族でそっちに引っ越す事になったんだよね。でも卒業はちゃんとするけどな」
「へ、へぇ……」
私達は二人共高校三年生。進路を決めないといけない歳だ。私だって、進路希望調査も提出している。実家から近い、地方の大学に。
けれど、朝陽は違うところに行く。
幼稚園から、小学校、中学校、高校と一緒だったのに。いつも一緒にいたのに。
「そ、っか……東京かぁ~! 都会デビューってやつ? いいじゃんいいじゃん!」
進路希望なんて私達の間では話題に出していなかったけれど、当然一緒の進路だったと思い込んでいた。田舎だから、近くには私の選んだ大学くらいしかない。だから、私達が通ってる高校の、大学進学の生徒は大体その大学を志望する。
だから、就職はしないって聞いた時からこれからも一緒だと思ってた。
そうだよね。進路は人それぞれだよね。うん、分かってる。
けれど……こんなに悲しい気持ちになるのは、どうしてだろう。
幼稚園からの付き合いで、ずっと連んでいた存在と、初めて離れ離れになった。
距離が近いと、気付かない事はいくつもある。
離れてみて、初めて気付く。
あぁ、私って朝陽の事――……
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