死んじゃうなら、その命くれない?

ep21:意識

「悠真!」

 別行動をしてから20分が過ぎた頃、彩奈が私の元へと駆けてきた。何かあったのだろうか。

「ちょ、ちょっとだけでいいから、悠真と二人になれる?」

 彩奈がそう言うと、明日香は気を利かせたのか「オッケー」と言ってその場を離れた。

 今いる場所は、美術館のバルコニー。燦々と太陽の光が降り注ぐ中、彩奈は私を見上げて言った。

「さ……さっきね、仁に告白されたの」

「そ、そうか……それで?」

「断っちゃった……私は……私は、悠真が好きだからって。でね……仁に言っちゃったのに、悠真に言ってないのはおかしいかなって。——ら、乱暴な告白になっちゃって恥ずかしいけど」

 頬を紅潮させた彩奈は、そう言うと下を向いてしまった。


 生まれて初めての告白……

 その告白を、まさか彩奈からされるなんて……

 わ、私の今の気持ちは……

 彩奈の告白にどう応えるか迷ったその時、何かが背中に『ドンッ』と当たった。

「ひっ、広樹!? なっ、何したのっ!?」

 彩奈が大声で叫ぶ。

 広樹……? 彩奈の元彼……?

 背中に当たった場所が熱い……手を伸ばすと、生暖かい液体が手に触れた。

「キャーーーー!!」

 彩奈や周りの生徒たちが悲鳴をあげる。生暖かい液体が、私の体内から止めどなく溢れ出てくる。

 血だ……

 背中を刺された事実に気づくと、たちまち激痛が襲ってきた。痛みに耐えられず、その場に膝から崩れ落ちる。

「悠真っ! 悠真ーーーっ!!」

 私を抱きかかえ、彩奈が泣き叫ぶ。

「ま……眞白……眞白と話がしたい……」

 刺されるなんて初めての経験なのに、遠のく意識の中でわかった。

 私はもう、助からないと。

「眞白ーーーっ!! 眞白どこーーーっ!!」

 彩奈が張り裂けんばかりの大声を上げる。明日香も……仁も大声で眞白を呼んでくれている。

 でもだめだ、もう限界かもしれない……


「悠真! 悠真っ!! 聞こえるっ!?」

 眞白の声だ……一瞬、意識が飛んでいたのかもしれない。眞白は私の耳元に口を当てて、叫んでいた。

「わ、私はもう駄目……お、お母さんをお願い……」

「気をしっかり持て!! 会った時のように、命をあずけると願え!!」

「ど……どういうこと……? そんなことしたら……」

「早くしろっ!! 生きたいだろっ!? まだ生きたいんだろ、眞白っ!!」

「うん……生きたい、まだ生きたいよ……」

 誰かに温かく包まれたような感触を覚えながら、再び私の意識は落ちていった。
< 21 / 24 >

この作品をシェア

pagetop