死んじゃうなら、その命くれない?

ep06:告白

 眞白と連れ立って、中庭へと廊下を進む。私が転校してきたことは既に話題になっているのだろう、多くの生徒が振り返って私たちを見た。

「おう、悠真! どこ行くんだ?」

 げっ……学食帰りだろうか、こんな時に春人と仁に鉢合わせてしまった。

「い、いやっ、眞白に中庭を案内してもらおうかなと思って……」

「それなら俺たちも付いていってやるよ。きっと眞白より、校内のことも詳しいと思うぜ」

 結局、私たちは四人で中庭へ向かうことになった。


「俺好きなんだよな、この中庭。今日なんて天気も良いから最高だよ」

 春人はベンチに深く腰掛け、「うーーーん」と身体を伸ばしてそう言った。

「そういやさ……今日の桜庭って、全然雰囲気違うよな? 春人も思うだろ?」

 仁がそう言うと、眞白の身体がビクッと震えた。

「確かにな。何か元気いっぱいって感じがするし。あと……前髪いつもと違うよな? 顔も明るく見えるし、そっちのが似合ってると思うよ俺は」

 照れもせず「ありがとう」と言う眞白の横で、何故か私が赤面してしまった。

 って言うか……私の髪型が変わったことに、春人は気づいてくれていた……?

「そういや、悠真はどこに住んでんの? 仁は部活あるから、帰りはいつも俺一人なんだよね。悠真も電車組?」

「そ、そうだね、今日も電車で来たよ。藤ノ台(ふじのだい)駅が最寄りかな」

「マジか! 俺と一緒じゃん! 北口? それとも、南口? 俺は北口から10分も歩かないとなんだけど」

「その……駅から出なくていいっていうか、なんて言うか……」

「も、もしかして、駅直結のあのタワマンに住んでるとか……?」

 コクリと私が頷くと、春人と仁は「マジかよ!」と声を上げた。


 結局、眞白には何も伝えることなく昼休みが終わってしまった。

 だが今日は、次の授業が終われば帰宅することができる。眞白に「学校では話せない事があるから、放課後に会えないか?」と、待ち合わせ場所と一緒にLINEを送っておいた。眞白は、「リョウカイ!」と書かれたスタンプを返してきた。


***


 待ち合わせ場所は、眞白の自宅近くの公園。

 ここに常盤高校の生徒が来ることはまず無い。時間つぶしにスマホをいじっていると、眞白が自転車でやってきた。

「えっ!? もう着いてたの? 急いで自転車漕いできたのに!」

 それはそうだろう、私はタクシーでここまで来たのだから。

 それより、本当に眞白が驚かなくてはいけないのはこれからだ。

「早速だけどさ。——眞白の本当の名前って何?」

「ん? 本当の名前ってどういうこと?」

 眞白はなにかの冗談だと思っているのだろう。ニコニコしながらそう答えた。

「本当の名前ってのは……地球人の名前じゃなくて、ルーメア人としての名前ってこと」

 私がそう言った瞬間、眞白の顔から笑みが消えた。

「いっ、今なんて言った……?」

「別に怖がることはないよ。私は君の敵どころか、味方のつもりだから。だから正直に全て話して欲しいんだ」

 私の言葉に覚悟を決めたのか、眞白は公園の端にあるベンチに私を促した。
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