嘘つきな天使
由佳が指定したのは店からあまり離れていないファミレスだった。由佳は酒豪だ。会う時は大抵飲めれば何でも良いと言う顔に似合わずそう言うこと気にしない大衆居酒屋等が多いけれど今日は珍しいな。
指定されたファミレスに向かうと、見慣れた軽自動車から由佳が出てきた。加納くんも一緒だ。
良かった、二人一緒。ってことは別れ話じゃないよね。
と、とりあえずほっ。
てことは結婚??
「ごめん、遅れて……」と言葉が止まったのは、由佳のあまりの変貌振りに驚いたからだ。
いつもピンクや白で統一されていた可愛いワンピースやスカート、ブラウスから一転、ボーダーのカットソー、ジーンズ、その上に寒そうにしながらパーカの前を合わせている。
顔にも化粧けがなく、随分やつれた感じがした。髪もしばらく手入れされてないのか一つ結びにしたその姿は私の知ってる由佳より十歳も老けて見えた。
由佳……どうしたの?これじゃ高校のときの陰キャに逆戻りだよ。
隣にいる加納くんはいつも通りだったけれど、どこか困り果てている……と言うかこちらも疲れた表情を見せていた。
「ど、どうしたの?」思わず走り寄って、心配そうに由佳を覗き込むと由佳は色のないかさついた唇で力なく笑って
「とりあえず中に入ろ。話すことが多すぎて」と言った。
由佳の言う”話すこと”って言うのが単なる別れ話じゃないことは分かったけれど、だったら何?
急に聞くのが怖くなって背中を嫌な何かが伝ってきた。