嘘つきな天使
と言うわけで、私は次の日加納くんに休みを取ってもらい、由佳と昨日知坂が調べてくれた”藤堂産婦人科”を訪ねた。
診療時間は書かれていなかったから、よくわからず午後3時だったら開いてるんじゃないかと言う感じで来ちゃったけど……昨日知坂から見せてもらったHPよりもっとおんぼろで地震が来たら一発アウトな感じの昔ながらの診療所って感じがした。昔は白かったであろう白い壁にはヒビがあちこち入っていたし、色もちょっとくすんでいる。それこそ古い医療ドラマとか出てきそうだよ。
ホントにここが口コミ通りの病院なのかちょっと心配になった。
木の枠でできたこれまた古めかしい扉を開け、「こ、こんにちは~」と中に足を踏み入れると、待合室だと思われるずらりと並べられたソファには誰も座っていなくて、受付だと思われるカウンターにも人が居なかった。
時間外だからか、それともこうゆう人気のない所なのか…
院内は病院独特の消毒液だの何らかの薬剤だの匂いが充満していて、これまた古びた扉に掲げられた『診察室』と書かれた看板の部屋からカチャカチャと言う何かの機材を鳴らす音が聞こえ、とりあえずはやっているってことが判明した。
「あ、彩未やっぱここちょっと変だよ……紹介してくれた知坂くんには悪いけど…」
「そうだよな…廃病院に住み着いている浮浪者かもしれないし」と加納くんまで言い出し、二人は帰るモード。
「ちょっ…ちょっと待って…」と二人を引き止めていると
「誰が浮浪者だって?」
低く良く澄んだ声の男の人の声が聞こえてきて、ぎぃと古めかしい木の音を立てて診察所から背の高い男の人が出てきた。
よれよれの白衣。黒い髪は手入れが行き届いていないのかボサボサ。浮浪者に限りなく近く感じたが、白衣のネームプレートに”Dr.藤堂”の文字を見て、この人が……と思い思わず足を止めた。
「今は診療時間外なんだけど。表のプレート見なかった?」と聞かれ私たちは三人そろって首を傾げた。
「プレートなんてあった?」
「さぁ俺見てないけど」
私と加納くんのやり取りを聞いていたその医師と思われる男の人が面倒くさそうに盛大にため息をつき
「また香坂さんの付け忘れか。仕方ない、診てやるよ」とボサボサ頭を掻きむしった。
診療時間外だから、と言う理由で追い出されそうな雰囲気だったのに、この人意外にいいひと??