竜王の歌姫
「……ヤッタヤッタヤッタ……これで目障りなヤツが消えるわああぁアアァアハハハハ!!」

カノンが取り込まれ、花の養分となったことを理解したルーシーは、狂ったような歓喜の笑い声を上げた。

枯れない涙を流しながら地面に倒れ伏すマーガレット、膝をついて荒い息を吐く騎士団長。
上空で、仲間を傷つけなければならない騎士たち。

皆が皆、絶望に打ちひしがれていた。

「このまま朽ち果てろぉおおおおおぉお!!」

ルーシーが高らかに叫んだその時、かすかに歌声が聞こえ始める。
そして、ツタの一部がみるみるうちに枯れていった。

力を失ったツタが地面に倒れ、消滅していく。
その中から現れたのは―――歌うカノンだった。

どうか、みんなの苦しみがなくなりますように。
思いを乗せて、声は響く。

「な……んだ……?」

「……歌……?」

その歌声に気づいた者たちは、絶望に俯いていた顔を上げる。

大雨に打たれながら、カノンは歌い続ける。


どうか、どうか―――私の歌が、届きますように。

雨によって染粉の黒が落ちて、カノン本来の白銀の髪があらわになっていく。

どこまでも高く、伸びやかに。
美しく響く歌声に、誰もが耳を傾けた。

「あ、身体が……!」

「痛みが引いて……!?」

瘴気による苦しみが、少しずつ引いていく。

「こりゃあ、どういうことだ……?」

騎士団長は苦痛のなくなった身体を起こし、歌声のする方―――カノンを見た。

「……まさか、歌姫は……」
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