竜王の歌姫
女たちによる合唱―――祈りの儀が終わると、祭壇から降りたルーシーを女たちが取り囲んでいた。
「ルーシー様、今日も最高でした」
「まるで光の女神様のようでしたわ」
褒め称える周囲の声に、ルーシーは頬にかかる銀髪を耳にかけて、にっこりと微笑んだ。
「ありがとう。あなたたちの歌も素敵だったわ」
そんな光景をよそに、カノンは気づかれぬようそっと礼拝堂を抜け出そうとする。
その背中に、声がかけられた。
「―――カノン」
ビクリ、肩を振るわせたカノンは立ち止まって、恐る恐る振り返った。
「こっちへいらっしゃい」
そう言ったのは、カノンを呼び止めた張本人であるルーシーだ。
「…………」
カノンは覚悟を決めたように、微笑みを浮かべたままのルーシーの元へと歩み寄った。
「カノン。あなたまた、祈りを捧げなかったわね?」
ルーシーはそう言ってから、わざとらしく「ああ」と声を上げた。
「捧げられない、の間違いだったわね。
だってあなたは―――声が出ないんですもの」
カノンは唇を噛み締める。
ルーシーの言う通り、カノンは喋ることも、歌うこともできない―――声を失った少女だった。
「ルーシー様、今日も最高でした」
「まるで光の女神様のようでしたわ」
褒め称える周囲の声に、ルーシーは頬にかかる銀髪を耳にかけて、にっこりと微笑んだ。
「ありがとう。あなたたちの歌も素敵だったわ」
そんな光景をよそに、カノンは気づかれぬようそっと礼拝堂を抜け出そうとする。
その背中に、声がかけられた。
「―――カノン」
ビクリ、肩を振るわせたカノンは立ち止まって、恐る恐る振り返った。
「こっちへいらっしゃい」
そう言ったのは、カノンを呼び止めた張本人であるルーシーだ。
「…………」
カノンは覚悟を決めたように、微笑みを浮かべたままのルーシーの元へと歩み寄った。
「カノン。あなたまた、祈りを捧げなかったわね?」
ルーシーはそう言ってから、わざとらしく「ああ」と声を上げた。
「捧げられない、の間違いだったわね。
だってあなたは―――声が出ないんですもの」
カノンは唇を噛み締める。
ルーシーの言う通り、カノンは喋ることも、歌うこともできない―――声を失った少女だった。